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150年の伝統を未来に受け継ぐ日本郵政グループ女子陸上部から見る「郵便」と「駅伝」の共通点とは
posted2021/03/31 11:00

3月22日からの合宿に参加した後列左から鈴木亜由子、高橋明日香、大西ひかり、廣中璃梨佳、鍋島莉奈、髙橋昌彦監督、前列は4月入社の高卒新人で左から小坂井智絵、土井葉月、三原梓
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Kiichi Matsumoto
今では日本屈指のチームへと成長を遂げた日本郵政グループ女子陸上部のここまでの歩みと、創業150年という節目の年を迎えた現在そして未来に、監督・選手の言葉で迫る。
明治維新から間もない1871年に誕生し、今年4月に創業150年を迎える日本郵政グループ。「手紙を運ぶ」など人々の生活を支え続けてきた同グループで、初の実業団チームとして2014年に誕生したのが女子陸上部だ。
創部3年目だった2016年8月にはリオデジャネイロオリンピックに2名の日本代表選手(鈴木亜由子、関根花観)を送り出し、同11月の実業団女子駅伝日本一を争うクイーンズ駅伝で初優勝。2019、2020年においては連覇を達成した。
今や押しも押されもせぬ国内屈指のトップチームとなっている同部だが、今年は日本郵政グループが節目の創業150年ということで、意気込みもひとしおだ。人の思いのこもった手紙を届ける郵便と、襷をつなぐことでチームの思いを伝える陸上。髙橋昌彦監督、キャプテンを務める鍋島莉奈(2016年入社)、期待の若手・廣中璃梨佳(2019年入社)にそれぞれの思いを聞いた。
1年目は選手7人で出発
「陸上部をゼロから立ち上げる時は苦労の連続でしたが、我々には当初から『150年』である2021年に駅伝で日本一になろうという明確な目標がありました。また会社は創部時から我々の活動に対する理解がとてもあり、手厚い支援をしてくださっています。ゆえに選手もスタッフもその期待に応えようと頑張ってきました」
髙橋監督はそう言いながら草創期の記憶に思いを馳せた。数々の実業団チームで指導した経験を持つ髙橋監督が日本郵政に入社したのは2013年5月。まずはグループ内におけるチームの存在意義、チーム目標を掲げ、スタッフの陣容や予算などの骨組みをデザインしながら、選手の獲得に動いた。
2013年春には名古屋大学在籍中で、当時日本学生界ナンバーワンの鈴木亜由子が2014年の創部メンバーとして新卒加入することが内定。1年目の2014年は選手7人からの出発だった。選手たちは「自分たちでチームの歴史をつくっていこう」という気概にあふれていた。
そこから先はミラクルのような快進撃が続いた。新しいチームならではの活気と、鈴木や関根といった軸になる選手の順調な成長により、創部2年目の2015年にはクイーンズ駅伝初出場。そして翌2016年には誰もがあっと驚く快挙を成し遂げた。創部3年目、2度目のクイーンズ駅伝挑戦にして早くも日本一の座に就いたのだ。
この年に大活躍したのが入社1年目の鍋島だった。
「創部したばかりのチームであれば、より自分を表現することができるのではないかと考えて、日本郵政に入社しました」