Sports Graphic NumberBACK NUMBER

内村航平「家のそばには、いつも体育館があった」~王者を育てた地を巡る~ 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2021/02/04 11:00

内村航平「家のそばには、いつも体育館があった」~王者を育てた地を巡る~<Number Web> photograph by Asami Enomoto

通学に使っていた京王線千歳烏山駅の線路沿い。上京1年目は電車の乗り換えに苦戦した

結婚、子どもの誕生で変化したこと

 社会人2年目の'12年には私生活にも大きな変化があった。ロンドン大会で個人総合の金メダルを獲得した後、結婚した。'13年には子どもが生まれた。すると、心境に変化が生じた。

「社会人になってから2年間は、常に体操のことを考えているのが良いだろうと思って過ごしていました。でも、結婚して子どもが生まれてからは、物事を引いた位置から見るようになって、全体が見えるようになったんです。それからは以前よりも生き生きと練習できるようになりました。引いて見ることで、自分のことを良く知ることができるようになったのだと思います」

 現在は練習拠点に通いやすい東京都内に暮らしており、2人のお嬢さんの良きパパでもある。

 思い返すと長崎の実家は体育館のすぐ隣にあり、高校時代も社会人になっても常に体育館の近くに住んできた。

「今回、世田谷エリアや井の頭公園付近などをまわってみて、当時は気づきませんでしたが、すごく良い所に住んでいたんだなと思いました。僕の理想は家を出たらすぐに練習して、終わったらすぐに帰ること。選ぶなら自然とそういう条件になっちゃいますし、結婚してからは何度か引っ越しをしましたが、8割方は僕の意見で決めています。引退したら? 9割は奥さんの意見になるでしょうね」

「新生活、全部楽しんで!」

 これまで数多くのタイトルを手にしてきた内村だが、メダルや賞状はリビングに飾っていないという。

「長崎の実家でも飾っていませんでしたし、僕はメダルを飾るのが嫌いなんです。引退した後は『金メダリストの内村航平』ではなく、シンプルに『内村航平』と紹介されたいですね」

 '16年12月に体操選手として初のプロ選手となった内村の夢は、体操がメジャーになること。体操選手の価値が上がれば紹介時にも説明不要になるということだろう。

 '20年夏、内村は6種目トータルで競う個人総合から、鉄棒のスペシャリストへと転身した。武器はH難度の離れ業である「ブレットシュナイダー」。そして、オールラウンダーとして世界8連覇を達成した時からの武器である「世界一美しい体操」にも磨きを掛けて、'21年夏に予定されている東京大会の頂点を見据えている。

 新たな目標に向けて鍛錬を続ける内村に、新たな生活を迎える人へのメッセージを聞くと、このような言葉が返ってきた。

「新生活にはいろいろなことが待ち受けていると思いますが、良いことも、大変なことも、全部楽しんでほしいですね」

 15歳の時、自分を信じてやってきた東京の木漏れ日の下で、内村は柔和な笑みを浮かべながらエールを送った。

「未来をつくる部屋探し」
~プロ体操選手 内村航平篇~

不動産情報サイトSUUMO(スーモ)が、春から新生活を始める人に向けて贈る動画「未来をつくる部屋探し」 ~プロ体操選手内村航平篇~ を2月4日より公開する。 著名人 がかつて住んでいた場所に赴き、当時の思い出を振り返る本企画。今年は内村航平選手と共に、故郷・長崎県諫早市から上京して最初に住んだ街、世田谷エリアや井の頭公園周辺を訪れた。

SUUMOタウンでは、内村選手が住まい探しのこだわりについて語っているインタビューも公開中。

BACK 1 2 3

ページトップ