第97回箱根駅伝(2021)BACK NUMBER

箱根駅伝を走れなかった主将の胸中。後輩に「自分の分まで頑張ってくれ」。

posted2021/01/14 11:00

 
箱根駅伝を走れなかった主将の胸中。後輩に「自分の分まで頑張ってくれ」。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

青学大の主将・神林(左)はケガで出場がかなわなかったが、給水員としてチームメイトを鼓舞した。

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Yuki Suenaga

 第97回箱根駅伝。主役がたくさん現れた、いい大会だった。

 およそ11時間に及ぶ長いレースだけに、実は最終10区での首位交代はあまり起きない。それが、起きた。

 優勝した駒澤大学の主役は、アンカーの石川拓慎(3年)である。

「前を走っていた創価大が見えたんです。どこで一気に詰めるか考えていたんですが、これなら捉えられると思ったのが20km地点でした。そこで大八木(弘明)監督からも『男だろ!』と言われてスイッチが入って、これは逆転したいなと思いました」

 残りおよそ2km。石川は、先行する創価大学の小野寺勇樹(3年)を捉え、そして抜いた。大八木監督の声が響く。

「男だよ!」

 駒大にとって13年ぶりの総合優勝は、箱根駅伝史上に残る劇的な展開によってもたらされた。

「総合力」が問われる大会に

 抜かれたとはいえ、創価大のアンカー・小野寺も主役のひとりである。レース後、彼はSNSで来年に向けての決意をしたためた。

「全部受け止めて来年強くなって戻ってきます」

 区間賞を獲得した大学が8校に及んだことからも、各大学に主役がいたのが窺える。往路では法政大学、東京国際大学、東海大学、山梨学院大学、帝京大学とすべての区間で異なる大学の選手が獲得し、復路では駒澤大学がふたり、東京国際大学、明治大学、そして創価大学の選手がそれぞれ獲得した。

 3位に入った東洋大学、4位の青山学院大学からは区間賞がひとりも出ておらず、改めて箱根駅伝はひとりの力ではなく「総合力」が問われる大会だということが浮き彫りになった。青学大の原晋監督がいう。

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