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あさのあつこが甲子園に思うこと。「人間教育って、怖いですよね」――2020 BEST5

posted2021/01/01 17:03

 
あさのあつこが甲子園に思うこと。「人間教育って、怖いですよね」――2020 BEST5<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

大人たちはちゃんと責任を果たしたと言えるのか、あさのさんと中村さんの会話は何度もそこへ戻ってきた。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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2020年、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。インタビュー部門の第1位は、こちら!(初公開日 2020年8月13日)。
『あさのあつこが語る甲子園への愛憎。書く原動力であり、アンチでもある。』より続く

――この春、新型コロナウイルスの感染状況を考慮して、選抜大会が中止になりました。そのとき、新聞で「英知を集めて開催すべきだった」「同調圧力に屈したのならば残念」というあさのさんのコメントを読み、少し心が震えました。

 開催が正しいかどうかというより、「高校野球だけが特別なのか」という逆風の中で、自分の思いをはっきりとぶつけていることに作家としての芯を感じました。

あさの「私は可能な限りの感染対策をして、観客を入れなくてもいいから、やる方向で努力して欲しいと思いましたよ。大人の底力を見せて欲しかった。やれるんだよ、って。それはすっごいありましたね。

 ただ、感染者が出たらどうするんだ、人の命を何だと思ってるんだと言われると黙るしかなかった」

――人命を軽視しているわけではないんですよね。そんなことは言っていない。でも、昨今の風潮として、反論のしようがない極論をぶつけて、黙らせようとしてくる。

あさの「大人たちは、黙るしかできないところで、本当に黙っちゃった。もちろん、私も含めてですが、選抜の中止は大人の力のなさを露呈してしまいましたね」

――夏の甲子園中止はどう受け止めましたか。

あさの「なんか誤魔化されているような気分になりました。甲子園はやらないけど各地の独自大会は支援するって、大人側だけで折り合いをつけている感じがして。

 そのあと、選抜出場チームの交流試合が発表されましたよね。やろうと思えばできるんじゃない、って。春も夏も中止になった中での決断だったので、選手やスタッフはそれは喜んでいましたけど、時間の経過とともに、果たしてこれがベストだったのかなと。交流試合ができるのなら、いっそのことトーナメントでもよかったんじゃないかという気はします。1試合でも嬉しいと言っている姿が、なんだか切なくて」

【次ページ】 野球が特別扱いだと言われても。

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