第97回箱根駅伝(2021)BACK NUMBER

[史上最速世代が語る箱根路 vol.3]
伊藤達彦「正々堂々と相澤に勝ちたかった」

posted2020/11/30 11:00

 
[史上最速世代が語る箱根路 vol.3]伊藤達彦「正々堂々と相澤に勝ちたかった」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

第96回箱根駅伝、2区で東国大・伊藤達彦(右)と東洋大・相澤晃の4年生エースによるデッドヒートが繰り広げられた。

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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Yuki Suenaga

 あの時、伊藤達彦はどんな思いで箱根路を駆けていたのだろう。

 各校のエースが揃う、花の2区。13位で東京国際大学のたすきを受けると、脇目もふらずに前を追った。

「とにかく楽しかったです。4年生でしたし、もう箱根を走る機会も最後だったので。一番盛り上がる大会でライバルと競い合えたのは、やっぱり楽しかったですね」

 5km過ぎに、13秒後方からスタートした東洋大学の相澤晃に並ばれた。相澤は誰もが認める世代ナンバーワンの選手だ。追いつかれ、並ばれ、引き離されることを予想した駅伝ファンは少なくなかっただろう。

 だが、伊藤の真骨頂はここからだった。抜かれるでもなく、後ろにつくわけでもなく、肩をぶつけ合うように並走し、ときに揺さぶりをかけて前に出た。区間記録を上回るハイペースで進んだ2人のつばぜり合いは、残り3kmまで続く。間違いなく前回大会のハイライトの一つだった。

「監督には『後ろに付け』と言われたんですけど、足を休めているみたいでイヤじゃないですか。正々堂々と戦って勝ちたかったので、バチバチ行きました(笑)。

 でも、負けちゃったので。あそこで離されたのは、やっぱり自分の力のなさ。学生時代に勝ちたかったけど、ダメでしたね」

高校で陸上競技を辞めるつもりだった

 伊藤の4年間は、恩師と呼ぶ東国大の大志田秀次監督からかけられたこんな言葉から始まっている。

「ウチで陸上を続けてみないか」

 高校卒業時、伊藤は陸上競技を辞めるつもりでいた。調理師の専門学校に進むか、それとも就職するかで悩んでいたという。高校時代の5000mの自己ベストは14分33秒。決して全国で目立つ選手ではなかったのだ。

「でも監督に熱心に誘っていただいて、続けると決めたからには頑張ろうと。ただ、入学当初の目標で言うと、箱根駅伝は4年生の時に一度走れれば良いかなってくらい。意識は低かったです」

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