第97回箱根駅伝(2021)BACK NUMBER
[史上最速世代が語る箱根路 vol.1]
吉田祐也「人生を変えた最初で最後の夢舞台」
posted2020/11/23 11:00
![[史上最速世代が語る箱根路 vol.1]吉田祐也「人生を変えた最初で最後の夢舞台」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/7/1500wm/img_d75e9afab5a7be5b9b0240c59fc1e936160755.jpg)
前回の箱根駅伝で青学大は10時間45分23秒の新記録で総合優勝。4区・吉田祐也は1時間00分30秒の区間新記録を打ち立てた。
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
たった一度の箱根駅伝。
2020年、青山学院大学の吉田祐也は、最初で最後の箱根駅伝を走った。任された区間は4区。快調に走った吉田は区間新記録をマークしていた。
「走り終えてからタイムを見て、自分でもびっくりしたくらいです」と振り返る。
しかし、箱根駅伝を走るまでの道のりはとても長かった。
「2、3年生の時は、12月10日に発表される16人の登録メンバーには入っていたんですが、箱根駅伝は走れませんでした。ただ、外されてしまったことを、自分で“美談”にしてしまったら、それこそ挫折だな、と思っていたので、4年生になってからも腐ることなく、練習を積みました。幸い、僕自身は走ることが好きでしたし、原(晋)監督からは『頼りにならない学年だなあ』と言われ続けていたので、同級生全体で見返したいという気持ちもあって、最後まで頑張れたんじゃないかと思います」
原監督「吉田はいつまでも走っている」
2019年5月に行われた関東インカレのハーフマラソンでは4位入賞。着実に実力は上がっていたが、それを支えたのは豊富な練習量だった。原監督は吉田について、こんな評価をしていた。
「夏合宿では、各自ジョグという、個人に練習量を任せる練習があるんですが、吉田はいつまでも走っているんです。30kmもへっちゃら。こちらが止めないと、いつまでも走っているくらいですよ」
青学大の部内は競争が激しいこともあり、吉田は可能な限り走りこんでいたという。
「いまの箱根駅伝はレベルが上がって、ハーフマラソン仕様というよりも、30km仕様にならないと区間上位では勝負できない時代になっていました。その意味で、練習でいつまでも走っていられる僕は向いていたかもしれません(笑)」
秋に入って、全日本大学駅伝の5区を走って区間3位の成績を残すなど、吉田は青学大にとって必要な人材になっていった。箱根駅伝で任されたのは往路の重要区間、4区だった。
「アップダウンへの適応がうまいということで、4区を走ることは夏合宿の時点からほぼ決まっていました。レース当日は、緊張というよりも、ワクワクする感じの方が強かったですね。直前の調整練習もうまくいって、試合が待ち遠しかったです。試合当日は、付き添いについてくれた同級生の中根(滉稀)が、『祐也、楽しまなきゃ損だよ』と言ってくれたのが印象的でしたね。僕にとっては青学のユニフォームを着て走る最後の駅伝でしたし、最後くらいは楽しく走りたいと思いました」