第97回箱根駅伝(2021)BACK NUMBER
駒大の全日本大学駅伝6年ぶり優勝を生んだ、アンカー勝負「2秒差」の綾。
posted2020/11/09 16:00

全日本大学駅伝では8区・田澤廉が57分34秒の区間賞でフィニッシュテープを切り、駒大に6年ぶりの優勝をもたらした。
text by

小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Asami Enomoto
鬼の目にも涙。
レース後、大八木弘明監督の目尻がうっすらとにじんでいるように見えたのは、勝つことが本当に難しい駅伝だったからだろう。
何度も黄色信号が灯りそうになりながら、駒澤大学は耐えに、耐えた。
全8区間106.8kmのコースで行われた全日本大学駅伝で3強の一角に挙げられながら、駒大はレース終盤まで一度も先頭に立つことができなかった。
「4kmで急にお腹が痛くなって」
4区を終えた時点で7位と、優勝候補の東海大学、青山学院大学に先行される苦しい展開。チームを救ったのが5区で区間2位の走りをした酒井亮太と、6区区間4位の山野力だった。
2人はともに2年生。晴れやかな表情で、山野が自身のレースを振り返る。
「正直、試合前は緊張していたんですけど、同級生が良い流れで、たすきを持ってきてくれて、自分も負けられないと思って気合いが入りました。ただ4kmで急にお腹が痛くなって、8kmまではずっと苦しかったです」
いわゆる差し込みによる腹痛だったが、走っている最中になんとか痛みは治まった。そこから意識したのは、最終ミーティングで個々に課せられた設定タイムをクリアすることだったという。
「厚底シューズの影響もあるし、監督が『優勝タイムは昨年より2分くらい速くなるだろう』と。僕は区間記録より24秒遅い37分50秒を設定されていたんですけど、まさにギリギリのクリアでした」
つなぎの区間で新戦力がしっかりと仕事を果たし、各校がエースを配する終盤の7区、8区へ。駒大は士気を落とすことなく、むしろ勢いをつける形でたすきをつなぐことができた。
一方で、ライバル校の継走はややちぐはぐな印象が拭えなかった。