Sports Graphic NumberBACK NUMBER

今こそ、スポーツを支える仕事に迫る<前編>名古屋グランパス/トライアスロン・ジャパン(日本トライアスロン連合)

posted2020/09/17 11:00

 
今こそ、スポーツを支える仕事に迫る<前編>名古屋グランパス/トライアスロン・ジャパン(日本トライアスロン連合)<Number Web> photograph by N.G.E./JTU

名古屋グランパス専務取締役の清水克洋氏(左)と、元オリンピックトライアスロン日本代表の田山寛豪氏。

text by

熊崎敬/林田順子

熊崎敬/林田順子Takashi Kumazaki/Junko Hayashida

PROFILE

photograph by

N.G.E./JTU

新型コロナウイルスの感染拡大により大打撃を受けたスポーツ界は、新たなスタイルを模索しながら、少しずつ歩を前に進めている。

本記事ではそのなかでも、スポーツ庁が実施する「スポーツ経営人材育成・活用推進事業」に手を挙げ、未曽有の事態においても新たな人材を取り入れ成長しようとする4団体を紹介。前編となる今回は、名古屋グランパスとトライアスロン・ジャパン(日本トライアスロン連合)が、先を見据えた経営戦略について語った。

J2降格の挫折を経て、4万人動員クラブへ。
名古屋グランパス躍進の理由と、その先の未来。

名古屋グランパスは今回の求人を通してチームを支える管理職を募集する。事業拡大するクラブを、経理やチームマネジメント面からサポートする仕事だ。募集の背景には、J2降格をきっかけに日々成長し続けるグランパスの経営戦略があった。

 失敗と無縁の人生がないように、スポーツの世界もまた無敗のキャリアはありえない。

 大切なことは、ひとつの敗戦、ミスから何をつかみ取るか。

 敗北は、明日の勝利につながる教訓の鉱脈。偉大なチーム、アスリートたちは、敗北を糧にして強くなった。

 コロナ禍で行なわれる今季のJ1リーグ、名古屋グランパスが上位戦線に新風を吹き込んでいる。

 リーグ最少失点の堅守と縦への鋭い攻撃を打ち出し、9月8日現在首位の川崎フロンターレに唯一の黒星をつけた。8年ぶりのACL出場も現実味を帯びている。

 グランパスの躍進を語るうえで忘れてはならないのが2017年、クラブ史上初めてJ2を戦ったシーズンだ。

 1年でのJ1復帰を決めたが、J2の洗礼に苦しみ、プレイオフ経由の薄氷の昇格だった。

 専務取締役の清水克洋氏は、このシーズンが大きな意味を持つことになったと考えている。

「当時、私はまだグランパスにいませんでしたが、降格によってチーム全体が危機感を持ち、激しい議論が戦わされたと聞いています。さらに過去にさかのぼると、グランパスは'10年にリーグ初優勝を飾り、翌'11年も僅差の2位と非常に強いチームができました。しかし観客動員が伸び悩んだことで、危機感が漂っていました。そうした中で成績も下降し、ついに降格。チーム史上初となる屈辱的な出来事で、すべてを見直さなければならないという機運が生まれたのです」

コンセプトは「町いちばんのクラブになる」

 '17年にフロントは刷新され、清水氏が加わる。このとき、クラブ全体がひとつの意思でまとまった。

《グランパスの第2の創業だ》

「クラブ創立から26年、もう一度ゼロから出発する気持ちで、新しいことにトライしようと考えました。また同時に、町いちばんのクラブになるというコンセプトを掲げました。強くて魅力あるチームを、私たちチームスタッフだけではなく、ファン・サポーターやパートナー企業の皆さんと一緒に創り上げたい。地域の皆さんと一緒に、という姿勢を打ち出したのです」

 グランパスは街のクラブ、みんなで一緒に育てていこう――。

 クラブが原点に立ち返った'17年、ホームタウンの風景が少しずつ変わり始めた。

 街角に鮮やかなチームカラーの幟がはためき、選手たちは前向きに学校訪問などのイベントに参加するようになる。

 日常の中で、グランパスを感じられる機会が増えていった。

 J1復帰から2年目の'19年、新生グランパスを象徴するイベントが大々的に行なわれた。

 その名も《鯱の大祭典》。

「このイベントは、福岡ソフトバンクホークスの“鷹の祭典”をモデルにしました。ものすごく盛り上がっていると聞き、広報担当、チケット担当、スポンサー担当、ホームタウン担当など、さまざまなメンバーを募って視察に行きました。驚きましたよ。街中のいたるところにホークスさんが露出していて、デパートのライオン像までユニフォームを着ている。福岡市民の日常にホークスが当たり前のように息づいているのが羨ましく感じられて、じゃあ、これをグランパスでもやってみようとなったわけです」

【次ページ】 4万人超のエネルギーで得た勝利

1 2 3 4 NEXT

ページトップ