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山縣亮太にとっての“オリジナル”。
「まだ見ぬ100点のレースを目指して」

posted2020/02/03 11:00

 
山縣亮太にとっての“オリジナル”。「まだ見ぬ100点のレースを目指して」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

text by

福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

PROFILE

photograph by

Kiichi Matsumoto

世界を舞台に活躍し、日本男子100mを牽引する存在である山縣亮太。コンマ何秒という刹那の世界を戦うスプリンターのオリジナリティとは――。

 地球上で最も速い人間を決める、陸上男子100m。この競技で雌雄を決するのに要する時間はおよそ10秒。このわずか10秒の壁を超えるために山縣亮太は、常に考え続ける。

「言ってしまえば100mの直線を走るだけの競技ではあるんですけど、すごく繊細な部分で差がつく。シンプルであるが故に奥深い競技だと思います」

 繊細な部分で差がつくと言いながらも、山縣には専属のコーチは存在しない。基本的に練習メニューは自ら考え、試行錯誤して作り上げていく。

「こういう練習をした方がいいとアドバイスをいただいたり、他の選手の練習を見て参考にすることはあります。でも実際にその練習をするかどうかは、どうして必要なのか、どこにメリットがあるのかをしっかり理解した上で、必要なものだけを取り入れるようにしています」

 常に考える。その素地は中学生の頃に培われた。通っていた広島県内屈指の進学校の陸上部は顧問の先生に言われたことをやるのではなく、与えられたメニューを各自でアレンジすることが求められた。

「この経験がベースになっています。大学では自分で考える環境に嫌気がさして、コーチがいるところにいきたいなと思っていた時期もあったんですけど。気が付いたらずっとこのまま来てしまいました」

 課題を見つけ、その課題をクリアするための練習を考え、走る。フォームをビデオで確認し、また新たな課題に挑む。突き詰めた先には世界大会での100mファイナリストという大きな目標が聳える。そのために10秒の壁を超えるのは絶対条件だ。

「これができれば9秒台が出せるというイメージは見えています。“心技体”という言葉がありますが、今は9秒台に必要な体作り、足の運び方やスタートブロックの飛び出し方といった技術、そして試合に臨むメンタルの作り方やモチベーションの上げ方といった一つ一つのピースを磨き上げ、はめていく作業の最中です。時間が必要な課題もあって、そう簡単にはすべてのピースがきれいにはまってくれない。でも、難しいからこそやり甲斐もあります」

【次ページ】 考える人・山縣亮太の準備。

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