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楢﨑智亜にとっての“オリジナル”。
「遊び心が生むパフォーマンス」

posted2019/12/02 11:00

 
楢﨑智亜にとっての“オリジナル”。「遊び心が生むパフォーマンス」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

text by

福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

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photograph by

Takuya Sugiyama

8月の世界選手権で優勝を果たし、世界ナンバーワンクライマーとなった楢﨑智亜。世界を舞台に戦う中でこだわっているオリジナリティを聞いた。

 身長169cmの身体に纏った引き締まった筋肉が生み出すバネ。スポーツクライミング界のエース・楢﨑智亜は壁面を縦横無尽に舞う姿から、「ニンジャ」の異名を持つ。

 スポーツクライミングには共通のルートで速さを競う「スピード」、制限時間内に設定された課題をいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、登った高さを競う「リード」の3種目があり、選手にはそれぞれ得意種目がある。楢﨑は「ボルダリング」を専門にするボルダラーだ。

「ボルダリングやリードの課題はルートセッターが課題を決めます。選手は壁に登る前にどう登るかルートを考える時間が与えられます。どういう意図でこのルートを決めたのか、普通はセッターの狙いを読み解いて登っていくんですけど、僕の場合はそこに自分の考え方を当てはめていきます。セッターの狙いはこうだと思うけど、あえて違うムーブを選んだり、独創的な動きを混ぜながら登る。そこが自分のオリジナリティだと思います」

 そのオリジナリティを楢﨑は“遊び心”と表現する。

「本当は足を残して(かけて)登るところだけど、次のホールドはとばして跳んだらどうなるのかなとか、柔軟な発想で登る方がわくわくして楽しいですよね。まだ自分に実力がなかった頃は、セッターの意図に合わせないと登れなかったので、真面目にコースと向き合うしかなかった。それである程度結果もでていました。でもここ数年はベストを出せば優勝できる実力がついているはずなのに勝てない時期が続きました」

 2018年はアジア競技大会、世界選手権など絶対の自信を持って挑んだ大会でことごとく失敗。フィジカルでは負ける要素はない……。楢﨑はメンタルトレーニングで、もう一度自分を見つめ直した。そこで導き出した答えが“遊び心”だった。

「勝ちたいという思いが強すぎて、心と身体のバランスがとれていなかったんだと思います。もう一度、クライミングを楽しんでいた頃の気持ちを思い出したときに、思い浮かんだのが、本来自分が大切にしていた自由とか遊び心というキーワードでした」

【次ページ】 遊び心が生んだ『トモアスキップ』。

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