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<母国探訪ルポ>
モハメド・サラー「エジプトの祈りと泣き虫ハメダ」

posted2019/09/05 08:00

 
<母国探訪ルポ>モハメド・サラー「エジプトの祈りと泣き虫ハメダ」<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph by

Daisuke Nakashima

リバプールでCL制覇の原動力となった髭面のエジプト人。いま最も勢いに乗るアタッカーの原点を探るために、その故郷を訪ね、幼少期を知る人々の話に耳を傾けた。浮かんできたのは、宗教的な期待までを背負う、静かな男の姿だった。(Number985号掲載)

 遠くカイロからの電話回線は混んでいて、言葉の節々にときおり雑音が混ざった。

「こっちはすごいことになっている。どこもかしこもサラーだ。私も何かと彼について聞かれている。チャンピオンズリーグで優勝したからな。エジプト中が彼を奉っているんだ」

 6月中旬、電話の向こうは元日本代表監督のハビエル・アギーレだ。当時はエジプト代表監督を務め、現地に住んでいた。

 聞きたかったのは、母国でのモハメド・サラーについてだった。

 数週間前の光景が目に焼き付いていた。

 マドリード、メトロポリターノ。舞台はチャンピオンズリーグ決勝、リバプール対トッテナム。開始2分でのPKによる先制点にスタンドは沸き、サラーはチームメイトの赤い輪の中で祝福された。

 やがて抱擁が終わると、選手たちはひとり、またひとりと静かに離れては自陣へと戻っていった。誰もが、その次にサラーが何をするのかを分かっているようだった。

 浅黒く日焼けした両手が地に重なる。サラーはひざまづき、ピッチに頭をつけ何かをつぶやく。ひとり静かに、自ら決めた先制点を祝っていた。目の前のスパーズサポーターから激しい非難が飛んでくる。その反対側、遠くのリバプール陣営からは主役を讃える歌が聞こえてくる。

 世界の視線が集まる中、ピッチの一角に造った小さな世界で彼は祈り続けていた。

 その先制点は試合の流れを呼び込む決定的なものとなり、リバプールは2-0で勝ち欧州王者となった。サラーはCLで優勝した、初めてのエジプト人選手となった。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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