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<Have a Dream 夢追い人の挑戦>
ラグビー日本代表・リーチマイケル/田村優/松島幸太朗「夢を懸けて」

posted2019/09/12 12:00

 
<Have a Dream 夢追い人の挑戦>ラグビー日本代表・リーチマイケル/田村優/松島幸太朗「夢を懸けて」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

photograph by

Naoya Sanuki

夢に向かって努力を重ねるアスリートに迫る連載。
第9回は大一番を控えた3人の桜の勇者が登場。

 ラグビー日本代表が、史上最大の挑戦を迎えようとしている。9月20日に開幕する、ホスト国としてのワールドカップ。桜のジャージに袖を通した男たちは数々の試練を乗り越えて、この大舞台にたどりついた。

 爆発的な加速としなやかな身のこなしによって、敵を翻弄する松島幸太朗。ラン、パス、キックを自在に操り、攻撃を統率する司令塔、田村優。そして背中で仲間を鼓舞するキャプテン、リーチマイケル。

 日本代表の命運をにぎる3人が、それぞれの挑戦の日々を振り返る。

高校卒業後、南アフリカへ渡った松島。

「南アフリカでの3年間、それがぼくにとっていちばんの冒険でした」

 松島幸太朗は迷いなく言う。

 桐蔭学園時代に高校日本一に輝くと、恩師の勧めもあって卒業後、生まれ故郷の南アフリカに渡る。強豪シャークスのアカデミーに飛び込んだ。

 だが、順風満帆ではなかった。両足のハムストリングを立て続けに断裂。さすがに不運を嘆きたくなった。

「友達とゲームをしたり、海に遊びに行ったりして気を紛らわせていましたが、日本に帰りたい気持ちがなかったと言えばウソになりますね」

 だが、人生に無駄な経験はひとつもない。プレーができなくても、松島は同年代のチームメイトから貪欲に吸収した。

「南アフリカの若手はハングリー精神が強くて、ラグビーで一生食べていく覚悟がある。そんな彼らと過ごしたことで、ぼくは日本の同世代の選手より早く、ハングリー精神やプロ意識を身につけられたと思う」

W杯後にも、壮大な挑戦へ。

 留学2年目、松島は大きな岐路に立たされる。南アフリカU-20代表候補に選ばれたのだ。本場で実力を認められ、松島は奮い立った。だが、このチームには参加しなかった。「ここでプレーすると、将来日本代表でプレーできないかもしれない」という助言を受け、辞退したのだ。

「このチャンスに懸けてもよかったですが、ぼくが育ったのは日本。ぼくにとっての代表チームはやっぱり日本代表ですから」

 目の前のチャンスに飛びつかず、その先の夢に懸けた松島。その思いが15年イングランドで結実する。世界を震撼させた南アフリカ戦の逆転劇。松島は奇跡の演出者のひとりとなった。

 20代半ばの若者は、ワールドカップ後も壮大な挑戦の計画を思い描く。

「新しい文化に触れたり、異なるスタイルのラグビーに触れてみたい。ですからもう一度、海外に挑戦しようと考えています」

 若くして日本を飛び出した男は、挑戦することの大切さを知っているのだ。

【次ページ】 司令塔・田村にとって2度目の大舞台。

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