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超進学校・日比谷の文武両道とは。
自らも部活顧問を続ける校長の理想。

posted2019/05/03 11:00

 
超進学校・日比谷の文武両道とは。自らも部活顧問を続ける校長の理想。<Number Web> photograph by Wataru Sato

日比谷高校の武内彰校長。「最近は腰が痛くて」と笑いながらも、生徒との試合は全力で勝ちにいく。

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Wataru Sato

 東京都立日比谷高校といえば、進学実績で「超」のつく名門校だ。

 2019年春の入試でも、東大に47人が合格。卒業生には文学では塩野七生、建築家の伊東豊雄、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 ところが、卒業生から思わぬ情報がもたらされた。

「日比谷高校の武内彰校長、バドミントン部の顧問なんですよ」

 え? 嘘でしょ。

 まさかまさか、日比谷の校長先生が自ら顧問をやってるだなんて。だったら、自分で確かめてみるしかない。

「校長先生が部活の顧問って、本当ですか?」

 そう取材申請したところ、快諾をいただいた。

校長室の一角に部活着が掛かっている。

 赤坂見附から、通称“遅刻坂”と呼ばれる新坂を上ると日比谷高校の校舎がある。

「ようこそ」と出迎えてくれた武内校長は、58歳。2012年に日比谷高校に赴任してから8年目を迎える。最初に「部活の顧問を務めているのは本当ですか?」と質問すると、武内校長はにっこりと笑い、

「本当です。昨日も生徒たちを大会へ引率してきたところです」

と答えると、ソファから立ち上がった。そして隅のパーテーションを動かすと、そこにはハンガーにかかったバドミントンの部活着が掛かっているではないか!

 これは、ガチである。

 しかも、校長先生自ら未だに大会に出場しているという。

「東京都高体連のバドミントン専門部長も務めていますし、全国教職員バドミントン選手権には、毎年出場しています。年代別の大会で、50代の部に出場していますが、3年前はベスト16にまで進みました。ただ、去年、一昨年と1回戦負けです(笑)」

校長室に部員が毎日やってくる。

 聞けば、初任の秋留台高校からスタートし、赴任した学校ではずっとバドミントン部の顧問を続けてきたという。

「40歳で大島南高校に赴任した時はバドミントン部がなかったのですが、毎週日曜に『やってみたい人は集まってください』と声をかけて活動を続けていました。その後、西高の副校長の間も続けていましたし、それが今につながっています」

 顧問を務めることで、生徒と触れる機会も多い。校長室のドアはいつもオープンだという。

「バドミントン部の生徒は、部活動のことで毎日校長室にやってきます。いつでも扉は開けておくけれど、居眠りしていたらそっと部屋を後にしてくれればいいから……と言ってあります」

【次ページ】 「日比谷では、学力と人間性の両方を」

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