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<Have a Dream 夢追い人の挑戦>
岡本和真が夢中に歩み続ける野球人生。

posted2019/03/28 11:00

 
<Have a Dream 夢追い人の挑戦>岡本和真が夢中に歩み続ける野球人生。<Number Web> photograph by AFLO

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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AFLO

夢に向かって努力を重ねるアスリートに迫る連載。
第6回は球界を代表する若きスラッガーが登場。

 岡本和真は、野球があまりに近くにあり過ぎて「夢」と認識できずにいた。

「8つ上のお兄ちゃんが、僕が生まれたばかりの頃からボールを握らせていたらしく、気づいた時にはボールが手にありました」

 物心ついた頃、少年はすでに夢の中にいて、あとはただ突っ走るだけだった。

「家の裏に広場があるんです。そこで草野球をやっていました。一番楽しかったのはバッティング。芯に当たった感触が嬉しくて。打球が広場を越えてしまっても向こうは畑ですから大丈夫なんです(笑)」

 吉野川沿いに広がる山と畑、名物の柿が揺れる景色、のどかな奈良・五條の名もない広場で走り始めた少年は、自分でも気づかないうちに夢を追い越していく。

二軍のグラウンドで自問自答した。

 小学1年生で地元の軟式野球チームに入った時、すでに『智辯学園に入り、甲子園に出て、プロ野球選手になる』と明確な未来図を描き、それを現実にしていった。

「高校2年生くらいからすごく打てるようになって、そうしたら、スカウトの人が見にきてくれるようになり、その頃から、自分の長所であるバッティングを伸ばしていけば、プロにいけると感じていました」

 17歳。その時点でプロ野球はたどり着くべき「目標」だった。だから、2014年のドラフト会議、読売巨人軍から単独1位指名を受けた時も、大きな夢をつかみ取ったようには感じていなかった。手にしていたタオルを目頭に当てたことから一部で「涙」とも報道されたが、じつは誤解だ。

「ドラフトの日、報道陣の方がたくさん来ていて、会見した部屋がめちゃくちゃ暑くて汗を拭いただけなんですよ(笑)」

 自分がいるのは夢の舞台かもしれないと思ったのは、むしろプロの世界に入ってから。入団から3年間、岡本は悩み深き二軍のグラウンドで自問自答した。

「3年目までは自分が思っているバッティングが全くできませんでした。そういう経験が高校まではなかった。僕の中では一軍に定着して、規定打席に到達してからがスタートだと思っていたので……」

【次ページ】 ホームラン王、打点王を獲りたい。

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