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<特別インタビュー>
楢﨑正剛「挑戦者のアウトフィット」

posted2019/03/14 10:30

 
<特別インタビュー>楢﨑正剛「挑戦者のアウトフィット」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

PROFILE

photograph by

Asami Enomoto

20年以上、第一線でゴールマウスを守った日本を代表する守護神は今年1月、静かにそのグローブを置いた。伝統のジャケットに身を包み語ったのは、挑戦者として戦い続けた人生の中で見出した、自身の在り方だった。

 長身の体格に、縦長の4ポケットジャケットが似合う。インナーにはシンプルな白のTシャツ。

「派手な格好はしないですね。男らしく見られる方が、僕は好きなんだと思う」

 無骨だが肩肘を張らない空気も醸し出す。ベルスタッフのジャケットは、そんな楢﨑正剛という男の生き方によく合っている。

 ロンドン・メイフェア。世界中のセレブや観光客が訪れる華やかな通りを歩いていると、白壁の大きなショップが目に入る。中には数々のアイテムが都会的な街にふさわしく、整頓して揃えられている。パリッとしたバイカージャケットが、よく映える。この街きってのビンテージロードであるポートベローマーケットに足を運ぶと、今度は軒を連ねるショップで年季のある風合いのユーズドジャケットが出迎える。年輩の店主が勧めるのは、それが英国の誇りであるスタンダードスタイルだからでもある。

 懐古趣味たっぷりの味わい。それとともに、ベルスタッフは現代にもしっくりくる前衛的な空気も漂わせる。楢﨑は、両方が香り立つ伝統的なジャケットに袖を通した。

「自分が普段着る服装でも違和感はないですね。シンプルな着こなしが好きですが、その中でもちょっとしたこだわりのあるものがいい。実は、若い時にベルスタッフのジャケットを着ていたことがありました。それは革ではなくナイロン生地のものでしたが、裏地のデザインやユニオンジャックのラベルがついているところなど、基本的な形は今も変わらない。古く渋い感じがありながら、いつだって新鮮にも着られる。馴染みの店が名古屋にあるんですが、そこで購入したことを思い出しました」

ディテールにこだわる服は好き。

 普段のワードローブを見ていると、彼は自分でも語るように決して派手さはないものの、TPOに応じた服装の中にしっかり「風合い」や「味」を感じさせる格好をしている。

「僕の服装は、全然面白くないと思うんですよ。奇抜じゃないし、遊びがあるわけでもない。昔は遊び心のあるデザインの服を着ていたこともあったけど、一度着たら会った人たちへのインパクトも強い分、何回も着ていくのは照れくさくなって。それに派手なスタイルは何年かして振り返ると結局登場した機会は限られていて。本当に自分が好きな服は、落ち着いているもの。むしろディテールにこだわる服は好き。だから自分の普段着に、このジャケットがあってもいいですよね」

 試着中、自らの手をポケットに入れてみたり、首元のデザインを気にしたりしていた。昔着ていた頃と変わらない部分を、手触りで確かめた。

【次ページ】 GKとして、何より基本を大切に。

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