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<Have a Dream 夢追い人の挑戦>
クライマー・楢﨑智亜の現在地。

posted2019/03/14 11:00

 
<Have a Dream 夢追い人の挑戦>クライマー・楢﨑智亜の現在地。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph by

Asami Enomoto

夢に向かって努力を重ねるアスリートに迫る連載。
第5回は日本男子クライミング界のエースが登場。

 2016年、日本人として初めてクライミング世界選手権のボルダリングで優勝を飾ると、同種目のW杯でも日本人男子で初めて年間チャンピオンに輝き、わずか20歳にして一躍、トップクライマーの仲間入りを果たした。さらに、2017年のW杯では、リード、ボルダリング、スピードの3種目で争われる複合部門で初の総合優勝を達成。若くてして世界のトップレベルに登りつめた楢﨑智亜は、それでもなお最強のクライマーを目指し、日々自身の登りを追求している。

『フィジカルモンスター』の異名を持つ22歳のエースは、鍛え抜かれた肉体と忍者のように壁を縦横無尽によじ登っていくスタイルで世界を驚嘆し続けてきた。そのルーツは幼少期に遡る。

「幼稚園の頃から器械体操をやっていたのですが、小学4年生のときにやめてしまったんです。何か他のスポーツをやりたいなと思ったときに、たまたま兄がやっていたクライミングについて行ってやってみたらすごく面白くて。器械体操で養った動きはクライミングに活かされていると感じることが本当に多いですね。空中感覚は他のクライマーより優れているなと自分自身でも感じています」

世界のトップに片っ端から聞いた。

 瞬く間に頭角を現すと、高校3年時には初めて日本代表としてW杯に出場した。「世界で戦える」手応えを掴み、プロとして生きる覚悟を決める転機となった。

「まだ自分がどれくらい世界で通用するのか分からずにW杯に出場したのですが、そこでトップ選手の登りや動きを見て、自分なら超えられると思えたんです。コーディネーション系のムーブには自信を持っていたのですが、それ以外の部分は完成度がまだ低かったので、それを補えば今後自分にもかなりチャンスが出てくるなと」

 成長著しい当時18歳の楢﨑は、世界のトップ選手に片っ端から聞いて回り、ルートを読み解く力や時間の使い方、ペース配分といった課題を克服。その中でフィジカルの高さを武器にしたスタイルから、効率的に確実に登ることも重視し、勝つためのスタイルも確立させていった。そうした絶え間ない努力が、2016年の日本人初の快挙、世界のトップ到達を後押ししたのだった。

【次ページ】 「一番強いのは智亜だ」となりたい。

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