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<番狂わせの真実>
ハーツクライvs.ディープインパクト「日本近代競馬の結晶を倒せ」 

text by

石田敏徳

石田敏徳Toshinori Ishida

PROFILE

photograph byKeiji Ishikawa

posted2016/12/25 06:00

<番狂わせの真実>ハーツクライvs.ディープインパクト「日本近代競馬の結晶を倒せ」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

来日15年目、37歳のルメールは今年の有馬もサトノダイヤモンドに騎乗予定。

思わぬ結果に約16万人の大観衆が驚いたが、それはある敗戦の反省から綿密に練られた計画だった。11年の時を経て、騎手ルメールが初めて明かした作戦とは。

 2005年12月25日、クリスマス当日に行われた第50回有馬記念は、無傷のグランプリ制覇に挑むディープインパクトが断然の主役と目されたレースである。しかし爆発的な末脚を武器に連勝街道を歩んできた三冠馬の前には、意表を突く先行策に打って出たハーツクライが立ちはだかった。

 ディープインパクトに初めての土をつけたあの勝利は、奇襲を実らせた金星と解釈されることが多い。だが、そうではなかった。そもそも私たちの目にはハーツクライという馬の“本質”が見えていなかったのだ。勝利に導いたクリストフ・ルメール騎手の回想を聞くと、そのことがよく分かる。


 今から11年前、26歳の自分が日本で直面していた苦悩の日々を、ルメールは次のように振り返る。

「大きなレースでは2着ばかり。ハナ差の負けも続きました。勝ちたくて、なのに勝てなくて、僕もまだ若かったし、イライラすることもありました。あの頃は本当に大変な時期でしたね」


 日本の競馬に参戦するようになった'02年以降、着々とステップアップを果たし、GIの舞台でもたびたび2着に食い込んできたルメールだが、JRA重賞はなぜか未勝利。“大きなレース”をなかなか勝てずに苦しんでいた。'05年の秋も悔しい惜敗が続き、ダイワメジャーとコンビを組んだマイルCSではハットトリックの強襲に屈してハナ差の2着。ハーツクライの手綱を取った翌週のジャパンCでも、英国のアルカセットに約3cm差という僅差で敗れた。

 2週連続のハナ差負け、通算5回目のGI・2着となったこのジャパンCは、ルメールにとってとりわけ痛恨の一戦だった。勝てたレースをみすみす落としてしまったという後悔が彼にはあった。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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