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<ドーハの背番号10、秘めた思い> ラモス瑠偉 「俺はオフトを男にしたかった」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byShigeyoshi Ohi

posted2013/10/23 06:01

<ドーハの背番号10、秘めた思い> ラモス瑠偉 「俺はオフトを男にしたかった」<Number Web> photograph by Shigeyoshi Ohi

ラモスの心を揺さぶった、ドクターの夜通しの治療。

ラモス瑠偉 Ruy Ramos 10 MF
生年月日―― 1957.2.9
出身地――― リオデジャネイロ
代表歴――― 32試合1得点

 2戦1分け1敗。いきなり後がなくなった。悲観的なムードがチームにも流れ始めていた。しかしラモスは違った。やるべきことは明白だったからだ。あと3つ、勝てばいいだけのこと。下を向く全員の前で、口角泡を飛ばした。「全部勝とうぜ、やろうぜ」と。

 自分が怯むと士気にかかわる。チームメイトにはハッパをかけながら、陰ではタックルを受けた肉体を回復させなければならなかった。動けば腰に激痛が走り、ロボットみたいなぎこちない歩き方になってしまう。次の北朝鮮戦はもう翌日に迫っていた。

「北朝鮮との試合は出られないと思っていたよ。だって体が動かないんだから。本当は武井(経憲)ドクターにチェックしてもらわなきゃいけなかったけど、先生は何人も選手を治療してるから、俺はもう行かないで寝かせてあげようと思ったの。そうしたら先生のほうからやってきて『何で言わないんだ!』と怒ってさ(笑)。そうしたら先生、俺が寝てる間もずっと治療してくれて……夜から朝までずっとだよ! 俺がドーハでずっと試合に出られたのも武井ドクターのおかげ。サポーターもあんな遠くまで来てくれた。俺はそういう人たちのためにも戦いたかった」

日韓戦勝利後の弛緩ムードに「ふざけんなと思った」。

 北朝鮮に3-0で勝利し、オフトジャパンは息を吹き返した。ラモスも勝利のため死力を尽くし、流れに乗ってライバル韓国までも撃破する。しかしここで彼のトーンは180度変わる。祝勝ムード一色になるチームを眺めながら、緊張の弛緩を感じ取ったのだ。

 イラクに勝たないと、何も意味がないのに。内からこみ上げる激しい怒りが、コメントを求めるメディアを遠ざけた。

「韓国に勝った翌日、マスコミのムードもW杯にもう行けたぐらいの感じだった。俺はふざけんなと思ったよ。マスコミには『喜んで泣いてる場合じゃないだろ』って書いて欲しかったぐらいだよ。キャプテンの(柱谷)哲っちゃんが俺の様子を見て『どうした?』と。俺が『見てみろよ、この雰囲気』って口を尖らせると、オフトに『この雰囲気はまずい』と言ってくれた。あのままだったらボロ負けだったと思う。でも、みんなの目の色がバッと変わったんだ。俺は相手のなかでイラクが一番強いと思っていたし、危機意識を持って、みんなも気持ちを一つにしてくれた。いい試合をして日本に帰ろうというムードをそこでつくることができた」

【次ページ】 「野良犬みたいな俺をオフトは見捨てなかった」

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