セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
柳沢、来期残留へのアピール。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT
posted2005/04/26 00:00
4月20日、フィオレンティーナ戦。0−1とリードされた後半27分から途中出場したFW柳沢敦(メッシーナ)が、絶妙パスで「エース健在」をアピールした。
アウェイ戦の厳しい条件下での戦いで、後半35分、フィオレンティーナのディフェンダー2人、3人に囲まれながらも得意のドリブル突破。ヤナギのパスから、FWディナポリが放ったシュートは惜しくもクロスバーを直撃。しかし、これで流れが変わった。完璧な連係プレーを見せるメッシーナのFW陣に、フィオレンティーナサポーターからは深い溜息さえ聞こえた。
リーグ戦1カ月ぶりの出場となった柳沢の、攻撃を取り仕切る気迫のこもったプレーに、チームメイトも勝利への執念を燃やした。後半ロスタイム、ディナポリが決めた会心の同点ゴールも、攻撃に刺激をもたらした柳沢の度重なる好プレーが、ある意味「引き金」となったといっても過言ではない。
常々、「仲間を引き立てるプレーが僕のスタイル」と口にしているように、その日、ムッティ監督の指示を全うし、「リフィニトーレ(仕上げ人)」の仕事をこなした柳沢は「負けている状況から勝ち点1をとったのは大事なこと」と、満足げだった。
4−2−3−1へのシステム変更を機に、柳沢がベンチを温める機会は急増した。新天地・メッシーナでも「控え選手扱い」は免れなかった。それでも、不安を打ち消すかのごとく、軽快な動きで練習に勤しんだ柳沢。日ごろのシステム練習での内容が起用のきっかけとなることを、セリエA2年目の彼が知らないわけはなかった。
ルーキー時代のサンプドリアでは、「鬼監督」と呼ばれるノベリーノの元で、強い精神力と安定したプレーを習得。正確なボールの供給、そして攻撃とのコンビネーションが、柳沢のように定位置を持たない選手には必須要素であることを、ノベリーノ監督から伝授されたのだった。その結果、セリエAでよく見られる、押し込まれる試合展開でも、難なく打開できるノウハウを学んだことは非常に大きかった。
「万全なコンディションを維持する」
元来、真面目な性格にプロ意識をもった柳沢に対して、チームの首脳陣も高評価。抜群のキープ力に、サンプドリア時代に学んだ的確なパスで別格の動きを見せるヤナギに、ムッティ監督も「攻撃の切り札」として柳沢の起用を常に念頭に置いている。
「個人的にはコンディションも上がっている。この調子で結果を残していきたい」
柳沢にとって、来季の残留が懸かった時期だけに、フィオレンティーナ戦での猛アピールは、保有権を持つ鹿島との交渉のために、近々来日する予定のペトリッカ代理人へのいい手土産となった。
4月24日、インテルを2−1で下した試合にも途中出場を果した柳沢。セリエA3年目のシーズンを確実なものにする日も間近に迫っている。