#848
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「今はもう、すっからかんです」3度目の五輪で6位、それでも高橋大輔が笑顔を見せた理由【ソチ五輪現地インタビュー】

頂点を目指して挑んだ、3度目にして最後のオリンピック。痛めた右足は回復せず、こだわりつづけた4回転は跳べなかった。それでもソチでステップを刻む高橋は、微笑みを浮かべていた。苦しみ抜いて迎えた舞台で、笑顔が生まれた理由とは――。(初出:Number848号[スペシャルインタビュー]高橋大輔「今はもう、すっからかんです」)

「こういう状態は、本当に久しぶりですね」

 フリーの演技を終えてから3日後、日本選手のメダリスト会見などが行なわれる「ジャパンハウス」で高橋大輔はそう口にした。取材を受け続けたからか、さすがに表情には疲労もうかがえたが、それでも、「よろしくお願いします」と丁寧な挨拶とともに、高橋は椅子に腰掛けた。背後の小さな窓の外では、激しい雨が降っていた。

 バンクーバー五輪で日本男子初のメダルとなる3位に入ってから4年。

「金メダルを狙います」

 そう抱負を語り、臨んだソチ五輪だった。

 フィギュアスケートの日本代表の中ではもっとも早く、1月下旬にモスクワ入りしてニコライ・モロゾフコーチの下で調整を続けてきた高橋は、2月9日にソチに到着。4日後に、ショートプログラムを迎えた。

 滑走順は出場選手30名のうち、29番目。午後11時をまわった、深夜ともいえる時刻にアイスバーグのリンクに登場する。

 曲は「ヴァイオリンのためのソナチネ」。

 冒頭の4回転トウループは高さが足りなかったためか回転不足に終わったが、続くトリプルアクセルは滑らかに着氷。ジャンプとジャンプのつなぎ、ステップと、丁寧に演じる。ヴァイオリンとピアノの音色に、高橋の動きが溶け込んでいく。おそらくはスタンドでもっとも多いであろう日本の観戦客が、四方から日の丸を揺らして称える。

 得点は86・40。3位に僅差の4位につけた。

 高橋はこう振り返る。

「あんなに緊張して、足ががくがくだったのは、久しぶりのことでした。ショートの2分50秒の間、ずっと緊張していましたから。でも一度滑ったことで、緊張は和らぎました。しかも最終グループに残れないんじゃないかと思っていたくらいの演技だったのに、残ることができた」

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photograph by Asami Enomoto

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