城島健司がもたらす「ふたつの作用」。~強化と育成のバランスが課題~

野球善哉

城島健司がもたらす「ふたつの作用」。
~強化と育成のバランスが課題~

氏原英明 = 文
text by Hideaki Ujihara
photograph by KYODO

 阪神の金本、藤川ら主力5選手が2010年の契約を交わさないままに、年を越した。なかには、チームのビジョンを問いたいという声も出ているという。どういった声が出てくるのか個人的には楽しみだが、昨シーズンBクラスにとどまった人気球団は、厳しい冬を迎えている。

 もっとも、厳しいのは契約未更改の彼らだけではない。特に気がかりなのは捕手陣たちである。

 契約更改で大幅アップにも浮かない顔をした狩野恵輔はその典型で、理由が何かは明白である。城島健司の加入に浮かれてなどいられない、そういったところだろう。矢野も、城島の話を記者から振られると「話すことはない」とコメントしたという。

左打者偏重の阪神打線にとって右の大砲・城島は起爆剤になる。

 今季の阪神で最大の関心事はマリナーズを退団した城島の加入だ。昨年のWBCでもその存在感をいかんなく発揮した主砲兼司令塔の加入は、昨季4位に沈んだ阪神には明るい兆しの差す補強策である。

 しかし、果たしてそうなるのだろうか。城島の加入を二つの側面から考えてみた。

 ひとつめ、城島の獲得が示すプラス要素。

 右の強打者の加入――。

 近年、阪神の弱点となっているのは右打者に人材が不足していることである。ここ数年、生え抜き選手でレギュラーを守ってきたのは関本賢太郎だけと言っていい。'08年にFAで新井を獲得したのは、まさに、そうした理由があったからだ。

 とはいえ、それだけではまだ足りないだろう。桜井広大に期待する声も多かったが、昨年まで、なかなか思うような成績をあげられなかった。そのため'08年のドラフトで長野久義獲得('10年巨人入り)を目指したが、編成部は長野指名を回避した。

 終盤にあった1番から4番までが左打者という打線の組み方は、真弓監督の采配以前に、チーム編成方針の偏りが招いたといってもいい。

 だから、どうしても右の強打者である城島は必要な戦力なのだ。

「ポスト矢野」となる正捕手の育成が阪神の急務であった。

 もうひとつの側面。

 この1年はなんだったのか――。

 ここ数年の阪神にとっての懸案事項だったのは、41歳になった矢野の後釜育成だった。そこで数年前からドラフトで、小刻みに「ポスト矢野」候補生を指名してきた。

 '00年に狩野、'03年に小宮山、'04年に自由枠で岡崎、'06年には高校1年時は城島二世と騒がれながら伸び悩んだ橋本良平を高校生ドラフトで、大学生ドラフトでは冷静沈着な司令塔・清水誉を指名した。

 とはいうものの、捕手というポジションは実戦経験を積まないことにはなかなかレベルは上がっていかない。ましてや、毎年のように優勝争いを繰り広げていた阪神が若手を育成する余裕などなかったし、目の前の「1勝」に固執する阪神ファンやメディアが矢野を外すという選択も認めてくれない。だから、ポスト矢野は成長してこなかった。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  「ポスト矢野」の萌芽が摘み取られてしまう懸念が……。

(更新日:2010年1月12日)

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筆者プロフィール

氏原英明

氏原英明

1977年ブラジル生まれ。奈良大学を卒業後、地方新聞社でのアルバイト勤務を経て、フリー活動を開始。高校野球を中心に活動を続けるが、野球を通じた人間性、人生観を伝え続け、Numberのほかに野球専門誌で活躍。WEBの世界でも「人間力×高校野球」(高校野球情報.com)と題したコラムを連載している。

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