小笠原の“ガッツ”が覚醒した夜。イチロー、松中とは違う運命へ!

野球クロスロード

小笠原の“ガッツ”が覚醒した夜。
イチロー、松中とは違う運命へ!

田口元義 = 文
text by Genki Taguchi
photograph by NIKKAN SPORTS

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糸数敬作小笠原道大

 日本シリーズ開幕前から、キーマンは北海道日本ハムの糸数敬作だと思っていた。だが実際には、プロ3年目とはいえ一軍デビュー1年目の右腕に、チームの命運を託すには荷が重すぎたようだ。

 甘いボールを確実に仕留められる巨人打線はやはり恐ろしい。

 日本ハムは東京ドームでの残り2試合、この強力打線と戦わなければならない。それは戦前より予測していたことだろうが、もっと厄介なのは、眠っていてほしかった男を目覚めさせてしまったがために、今まで以上のプレッシャーを背負わなければならなくなったことだ。

 眠っていた男とは、第3戦で決勝タイムリーを放った小笠原道大だ。

逆シリーズ男の記憶……イチロー10の2、松中19の1。

 日本シリーズには度々「逆シリーズ男」なる選手が現れる。それは誰にでも該当するものではない。チームの主軸に限って付けられる不名誉な称号。小笠原は第2戦まで8打数1安打と、それに最も近い位置にいた。

 およそ第3戦まで快音が続かなければ、逆シリーズ男になる確率は高い。1995年のイチロー(オリックス)は3試合で10打数2安打、2000年の松中信彦(当時ダイエー)は19打数1安打、2002年の和田一浩(西武)は11打数無安打だった。小笠原にしても、このゲームで1本も出ずに、結果、チームも日本一を逃すようなことがあればA級戦犯になりかねなかった。

 不振の小笠原を甦らせたのは、言うまでもなく3回の本塁打と5回の勝ち越しタイムリーだ。とはいっても、復活のきっかけをそれだけに集約してしまっては面白くない。

 カギとなる場面がふたつあった。

第2打席のファウルと第4打席の四球をどう見るか?

 ひとつは本塁打を放った2打席目の初球。

 外角のフォークボールに泳がされてしまいボテボテのファーストゴロ、になりそうな打球がファウルとなった。

 フェアゾーンとの境界線は数十cm。小笠原クラスの打者であれば、その打席でタイミングをアジャストすることができる。糸数にとっては不運だったが、このファウルが好調時のタイミングを呼び覚まさせた。

 もうひとつは第4打席。

 第1打席では、カウント0-3から外角高めの、見逃せばボールになりそうな球を簡単にレフトへ打ち上げた。2番の松本哲也が安打で出塁したため、セオリー通りに攻めるなら1球は見逃していい場面である。四球で出ればチャンスで4番のラミレスに繋ぐことができたものを。不調時の典型的なパターンだ。

 それが第4打席では全く違っていた。同じく0-3からの4球目、1打席目と同じコースに来たボールに対しピクリとも反応せず四球を選んだ。第2打席と第3打席の結果が、小笠原に本来の選球眼を取り戻させたのだ。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  1997年日本シリーズの古田敦也とまったく同じ成績だった!?

(更新日:2009年11月4日)

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筆者プロフィール

田口元義

田口元義

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。共著に「戦力外通告 プロ野球をクビになった男たち」、同「諦めない男たち」などがある。

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