西武か……。
この感じ。
1985年、PL学園の清原和博を引き当てたとき。また、1998年、横浜高校の松坂大輔の交渉権を獲得したときの「感じ」がフラッシュバックした。
先日のドラフト会議で、花巻東の菊池雄星が次に着ることになるユニフォームの色がほぼ決まった。西武のレジェンドブルーだ。
それにしても、西武は引きが強い。
清原、松坂を継ぐスーパースター候補・菊池をどう育てる?
西武の育成システムは評価が高い。それは誰しもが認めるところだろう。
だが、こと清原、松坂という超一流クラスの選手となると、どこか「力を持て余していた」という印象も拭えない。
先日、ある北海道日本ハムの関係者がこんな話をしていた。
「昔、巨人の選手はお客さんが入るから気を抜けない、だからうまくなる、って言われていた。それが今の日本ハムを見ていて本当によくわかりましたよ」
日本ハムのダルビッシュ有がその才能を遺憾なく発揮しているのは、連日のように熱狂的なファイターズファンで埋まる札幌ドームの環境と無縁ではあるまい。楽天における田中将大もそうだ。観客の大声援が、最後の最後までチューブの中の歯磨き粉を使い切るように、力を絞り出させるのだ。最も自分を磨かなければいけない時期に、2人は本当にいい球団に入ったと思う。
西武も「埼玉西武」に変わってから、徐々に平均観客動員数を伸ばしている。今年も、福岡ソフトバンク、北海道日本ハムに次いでパ・リーグでは多かった。トータルの観客動員数でも、ホーム球場の収容人数が多いというのもあるが東北楽天を上回ってさえいる。だが、やはり楽天の方が地域に根差した一体感がある。熱がある。
一流選手にふさわしい西武ドームの熱気が欲しい。
一流選手には一流選手にふさわしい舞台というものがある。ましてや清原や松坂のように高校時代、超満員に膨れあがった甲子園球場の興奮を知っている者なら、観客が半分にも満たないスタンドに寂しさを覚えるのも無理はない。
その昔、「清原は大舞台に強い」とか「松坂は大舞台に弱い」と言われたように、舞台が大きくなればなるほど気分が乗ってきたり、また逆に気持ちが空回りしてしまっていたのは、常日頃、ホームにしているグラウンドの環境が影響していたのではないだろうか。
手を抜いていた、とまでは言わない。でも人間など、そういうものだ。人が見ていればいるほど力の水位は上がる。また、人に見られている時の感覚を知っている者ほど、誰も見ていなければ力の水位は下がる。
<次ページに続く>
筆者プロフィール

中村計
1973年千葉県出身。ノンフィクションライター。某スポーツ紙を経て独立。『Number』(文藝春秋)、『スポルティーバ』(集英社)などで執筆。『甲子園が割れた日 松井秀喜の5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回(2007年度)ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。他に『佐賀北の夏』(ヴィレッジブックス)、共著に『早実vs.駒大苫小牧』(朝日新書)などがある。『雪合戦マガジン』の編集長も務める。趣味は、落語鑑賞と、バイクと、競艇。
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