ブーイングは一向に鳴り止まなかった。
空席が目立った味の素スタジアムで大きな声援を送っていたサポーターたちの怒りは無理もない。ベネズエラ戦に続き、東アジアサッカー選手権の開幕戦となった中国戦でもスコアレスドローに終わった。寒空を突き刺すようなブーイングを浴びた岡田ジャパンの面々は試合後も一様に硬い表情を崩さなかった。
「ビルドアップやスペースをつくる動きはよくなった。だいぶ動きが出てきて、感覚が戻ってきたと思う」
岡田武史監督はこの試合における一定の成果を強調した。確かにベネズエラ戦よりも攻撃の形は出来ていた。攻撃に転ずると3トップになってサイドで起点をつくり、タメができることでサイドバックを上げることもできた。前半29分、高い位置まで長友佑都が上がり、左サイドで起点をつくった玉田圭司との連係からシュートを放つなど、サイド攻略の意識がチーム全体に強く刷り込まれていた。
チャンスはつくれるが、得点に至らず。その理由とは?
このように度々チャンスをつくりながらも、結局は1点も奪えなかった。シュートやクロスの精度はもちろんだが、最も問題だったのはゴールを導くための工夫と迫力の欠如ではなかったか。
サイドにボールが出れば、ニアに合わせるイメージで単純にクロスを放つ。このパターンの繰り返しだった。クロスの出し手とペナルティーエリアに飛び込んでくるプレイヤーと呼吸が合っていないにもかかわらずクロスが実行に移されれば、長身の選手をそろえた中国に楽々と弾き返されて当然である。
それに、ボールを高い位置で奪ってペナルティーエリア付近までボールを運べても、単調なリズムの横パスばかりでは相手にとって脅威にならない。誰かを裏に走らせるようなシーンは数少なかった。
攻撃に変化をつけようとした遠藤保仁だったのだが……。
この日、少なからずとも攻撃に変化をつけようとしていたのが遠藤保仁である。天皇杯決勝戦までプレーした影響もあってコンディションはまだまだ不十分で、前線に飛び出すような動きも見られなかった。それでも遠藤が攻撃に絡むだけでリズムは変わった。
特に目を引いたのが後半20分のプレーだ。相手陣営に入って中村憲剛から横パスを受けた遠藤は相手の最終ラインにギャップが出来ているのを見逃さず、平山相太を狙って縦に浮き球のボールを入れている。平山のボレーは不発に終わったものの、相手の虚を突く効果的なパスであった。
<次ページに続く>
筆者プロフィール
二宮寿朗
1972年愛媛県生まれ。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、数々のスポーツシーンの目撃者となる。'06年に退社し「Number」編集部を経て独立。高円寺の居酒屋でスポーツ談義に花を咲かせることが唯一の趣味。著書には『闘争人~松田直樹物語』(三栄書房)がある。
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