いま僕は、南アW杯本大会のスケジュールに目を凝らしている。どの試合に取材申請を送るべきか、頭を痛めている最中だ。とは言っても、苦しんでいるわけではない。
5カ月後に迫ったW杯の旅の計画を練っているのだ。南アフリカはサッカーがらみで訪れる国のなかでは最も治安が悪そうだとはいえ、それでもワクワク、ドキドキする行為になる。
グループリーグは1日最大4試合が行なわれる。生観戦が可能な試合は1日1試合。捨て試合を、1日最大3試合設けなければならない。どの試合を捨てるべきか。そうした意味で頭を痛めているのだが、すべての試合にいとおしさが感じられて、捨てる勇気が湧かないのだ。スケジュールをいくら睨んでも、答えは出ずじまい。長考を強いられている。
4年に一度の、至福のときを過ごしているのかもしれない。この快感を味わうために、この職業に就いていると言ってもいい。
開幕戦から決勝T1回戦まで、19日間連続で真剣勝負が見られる。
W杯本大会は、開幕戦からベスト8がすべて出そろう決勝トーナメント1回戦の最終日まで、19日間ぶっ通しで試合が行なわれる。その気になれば、19試合連続で試合が観戦できる。サッカー好きの大馬鹿者にとってはこの上ない幸せだ。すべてが真剣勝負。試合のレベルは、それなりに高い。なかには大当たりも潜んでいる。期待に胸をふくらませながら、各スタジアムに駆けつける。サッカー馬鹿になりきるには、もってこいの舞台。これ以上、望めないシチュエーションだ。
そのうえ、今回の舞台は南アフリカだ。その国土は、日本のおよそ3.2倍もある。気候も各都市間でずいぶん隔たりがある。つまり、服装にも注意が必要になる。さらに言えば、訪れるべき観光スポットも、喜望峰、ライオンズヘッド、クルーガー国立公園など、目白押し。旅行者としての腕も試されている、旅行しがいのある国なのだ。
試合は2日連続同じスタジアムで行なわれないので、試合と試合の間には移動がはさまる。移動と観戦の繰り返しだ。その間に原稿も書くので、睡眠時間は限られる。これほどまでにハードな旅行もめずらしい。にもかかわらず、5カ月も前からワクワク、ドキドキすることができる。
しかしその19日間は、瞬く間に経過する。気がつけばベスト8が出そろっている。24チームが次々と舞台から消えていく。お気に入りのチームが、知らぬ間に敗退していたりする。観戦可能な残り試合はたったの6試合。大会が終盤に近づくにつれ、夏休みの終盤にさしかかったような切なさもこみ上げてくる。と同時に、残りの試合がますます重く感じられる。
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筆者プロフィール
杉山茂樹
1959年7月8日生まれ。静岡県出身。大学卒業後、フリーのライターとして「Sports Graphic Number」やサッカー専門誌などで執筆するほか、解説者としても活躍中。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「ワールドカップが夢だった。」(ダイヤモンド社)、「サッカー世界基準100」(実業之日本)、「4-2-3-1」(光文社新書)、「日
本サッカー偏差値52 」(じっぴコンパクト)などがある。
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