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「いまだに信じられない……」
顎と頬の“午後5時の陰”を濃くしたマーク・ウェバーは、開口一番そうつぶやいた。前日132戦目の初ポールというグランプリ最遅記録を更新した32歳のオーストラリア人は、翌日のドイツGP決勝で131戦目の初優勝というこれまた最遅記録を更新。しかし、苦労人があがいた末につかんだ勝利 というムードはなく、前戦イギリスGPから急激にマシン・パフォーマンスを上げて来たレッドブルを駆っての勝利であってみれば、F1というスポーツはドライバーとチームの巡り合わせがいかに重要かを再認識させられるような初勝利の印象だった。
「最速のマシン」との出会いでついにブレイク。
マーク・ウェバーは過去にF3を走り、F3000にステップアップし、メルセデス・ベンツでル・マンに出場して空を舞うクラッシュに見舞われるなど、F1に到るまで豊富な経験を積んできた稀有なドライバーである。
F1デビューは2002年の母国オーストラリア(メルボルン)で、この時は非力なミナルディを駆って5位入賞を果たすセンセーションを巻き起こした。ちなみに同レースでデビューした新人がフェリペ・マッサ(ザウバー)、アラン・マクニッシュ(トヨタ)、そして佐藤琢磨(ジョーダン)だった。その後はジャガー(コスワース:'03~'04)、ウイリアムズ(BMW~コスワース:'05、'06)、レッドブル(ルノー:2007~)と移籍したもののしょせんジャガーは勝てるマシンではなく、ウイリアムズも絶頂期を過ぎており、レッドブルは発展途上期。8年間のグランプリ生活で今年のドイツまで予選2位は4回、 決勝2位も3回あったがポールポジションと優勝には無縁だった。それがニュルブルクリンクで一気にブレイクスルーとなったのは、ひとえに空力の魔術師エイドリアン・ニューエイが手がけたレッドブルRB5の進化の賜物だ。高ダウンフォース化が施されタイヤのパフォーマンスの限界まで引き出せる最速のマシンを得たウェバーは、ヨーロッパラウンドに入ってから予選で常にトップ10入り。決勝もスペインから3位→5位→2位→2位と、いつ勝ってもおかしくないポジションにいた。
それでも関係者がウェバーの勝利に半信半疑だったのはチームメイトのベッテルのパフォーマンスの方がはるかに目立ったからで、ニュルブルクリンクでも予選4位のベッテルが勝つのでは……と予想する向きも少なくはなかった。
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筆者プロフィール
西山平夫
1952年生まれ、新潟県出身。レース雑誌「AUTO SPORT」編集部を経て1984年にフリーランスに。現在F1全戦取材を主軸に「Racing On」「F1速報」「NAVI」等に寄稿。ひいきのドライバーはF・アロンソ。
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