K-1の隆盛がもたらした、格闘技界の“ムエタイ回帰”現象。

濃度・オブ・ザ・リング

K-1の隆盛がもたらした、
格闘技界の“ムエタイ回帰”現象。

橋本宗洋 = 文
text by Norihiro Hashimoto
photograph by GBR

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 昨年あたりから、格闘技界で“ムエタイ回帰”のムーブメントが始まっている。

 昨年1月には代々木第二体育館でビッグイベント『ムエローク』が開催。今年も1月17日に『ムエローク』、23日に『REBELS』と2週連続でムエタイイベントが行なわれている(会場はともにディファ有明)。

 キックボクシングの源流でもあるムエタイが、ここにきて再び脚光を浴びている大きな理由として挙げられるのが、K-1の隆盛である。

K-1では見られない、ムエタイならではの妙技。

 現在、打撃系格闘技の一般的なイメージは、イコールK-1と言っていいだろう。だが、K-1にはルールによって見ることのできない攻防もあるのだ。

 その一つが、ヒジ打ちである。至近距離から一瞬で相手の顔面を切り裂き、出血によるドクターストップに追い込むヒジ打ちは、打撃の中でも最も高度なテクニックだ。しかしテレビ中継を前提としたK-1では、出血はタブー。よってヒジ打ちも禁止されることになった。

 首相撲で相手を崩し、ヒザ蹴りを叩き込むのもムエタイならではのテクニックだが、K-1では相手を両手で掴んでの攻撃は一発までに制限されている。組んだ状態からの細かい攻防が“退屈なクリンチ”にしか見えないためだろう。

 K-1は、ヒジ打ちや首相撲といったムエタイ式のテクニックを禁止したこともあって、万人受けするメジャースポーツとしての地位を確立していったのである。最近では、キックボクシング団体でもヒジ打ち禁止やK-1ルールを採用した試合が増加傾向にある。

 だが、世の中にはメジャーだけで満足できないファンもいる。映画というジャンルがハリウッドの超大作ばかりで成り立っているわけではないのと同じように、格闘技界にも“分かりやすさ”より“深さ”を求めるファンがいるのだ。K-1による業界の寡占化が進んだことで、逆にムエタイならではの攻防が見直され、求められたと言っていい。

 17日の『ムエローク』ではタイのトップ選手ばかりを集めたトーナメントがスタート。『REBELS』は日本人選手とタイ人の5対5マッチを中心としたマッチメイクが注目を集めている。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  ファンを楽しませる“ムエタイ攻略論”の多様性。

(更新日:2010年1月30日)

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筆者プロフィール

橋本宗洋

橋本宗洋

1972年、茨城県出身。大学在学中に雑誌『格闘技通信』でアルバイトを始め、谷川貞治氏(現・K-1イベントプロデューサー)が編集長を務めた『SRS・DX』編集部を経てフリーに。総合格闘技からキック・ムエタイ、女子格闘技まで、興味の赴くまま取材しつつ、ここ数年は映画レビューも執筆。格闘技と映画、少年時代からの二大好物を仕事にしてしまったため、現在の楽しみは大会取材後に仲間と飲む酒のみというズサンな独身生活を送る。

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