都心の青山霊園は移転すべきか？

　六本木ヒルズを出て、まずは乃木坂トンネルをくぐっていこう。と、すぐに青山霊園に着く。

　トンネルを過ぎると目の前はすべて墓地になる。振り返ると巨大な森タワー。まさに都心の中の霊園なんだなあと思う。

　都心というだけじゃない。青山というお土地柄は、まさに絵に描いたような高級商業地。そして高級住宅地。東京のオシャレ＆リッチの最先端である。

　そこにこれだけ広大な墓地が広がっているということ。少々不謹慎な言い方をすると、何たる無駄、という人もいるかもしれない。墓地なんて街の外れでいいではないか。そうでなくとも、もう少し地価の安いところに移転してしまえばいいではないか、とね。

　私としてもそう思わないこともない。

　でも、ここにあることが嫌いなわけでもない。

　というより、この霊園が好きだ。春になると桜、秋になると落葉。都心のビルを背景にして、四季折々の自然が墓石の周りに展開する。そして、現在のザ・東京を作った人々、時代を築いた人々が、ここに眠っている。都心の真ん中にそういうものがあるのは決して悪いことではないと思うのだ。

　青山霊園、今となっては、こんなにオカルト（つまりは気味悪さ）と無縁の墓地も珍しいだろう。それどころか何だか佇まいがさっぱりと明るい。

池田勇人、市川團十郎、犬養毅……。

　世の墓地は今や完全に2種類に分かれてしまった。

「きもだめし系」の墓地と「パワースポット系」の墓地だ。青山霊園は完全に後者である。だからだろうか、明るい冬の日にこのあたりを散策する若いカップルもいたりする。ここに眠る幾多の霊魂パワーをもらうために、ということなのかもしれない。もちろん著名人の墓は多い。珍しいところでは忠犬ハチ公の墓なんかもここにある。有名犬である。

　青山霊園は日本で初めての公営墓地だそうだ。ちなみにこれ以降、出てくる都営霊園の墓の所在地は必ず「○区○種○側○番」というように記されている。これがお墓の住所。そして、各霊園の管理事務所では、著名人のお墓地図をパンフレットにして用意している。

　サービスがいいというか、故人への礼を尽くしているというか、逆に故人のプライバシーがないというか。

　いや、ま、そんなことはない。

　偲ばれ、礼拝されることを、嫌がる故人はいないだろう。少なくとも、こうした都内メジャー霊園に葬られているかぎりは。

【青山霊園に葬られたおもな著名人】
▼池田勇人▼市川團十郎▼犬養毅▼大久保利通▼北里柴三郎▼エドアルド・キヨソネ▼国木田独歩▼後藤新平▼小村寿太郎▼斎藤茂吉▼志賀直哉▼乃木希典▼埴谷雄高▼浜口雄幸▼星新一▼松岡洋右▼松方正義▼御木本幸吉▼吉田茂▼ほか（青山霊園はこれでもほんの一部に過ぎない。本気でちょっと数え切れない）

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