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人種差別騒動の渦中で
キ・ソンヨンが担うもの。
~猿真似パフォーマンス余話~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byREUTERS/AFLO

posted2011/02/26 08:00

“韓国のジェラード”の異名をとるキ・ソンヨン(上)は今季リーグ戦15試合3ゴールの活躍

“韓国のジェラード”の異名をとるキ・ソンヨン(上)は今季リーグ戦15試合3ゴールの活躍

 アジアカップ準決勝の日韓戦で見せた猿真似パフォーマンスで物議を醸したのが韓国代表キ・ソンヨンだった。この一件は日韓両国だけでなく、はるかスコットランドにまで飛び火している。

 キ・ソンヨンが所属するセルティックの本拠地グラスゴーでもアジアカップは放送されたが、特に注目を集めていたわけではなかった。しかし「スコットランドのサポーターに人種差別的なヤジを受けていたから」との発言が火をつけ、同国でも日韓問題や人種差別が話題に。某地元紙は「単なる言い訳としてスコットランドサポーターを使っただけ」と、キ・ソンヨンを批判している。

 しかし、彼が実際に人種差別的なヤジを受けていたのも事実だ。

 昨年10月にセント・ジョンストンのサポーターが「犬を食べたのはどいつだ?」という内容の歌をキ・ソンヨンに浴びせ、同僚チャ・ドゥリに対しては猿の鳴き声を繰り返した。この件に対しては、セルティックが「フットボールにおいてあるまじき行為」と公式声明を出し、地元警察も動き出す始末となっている。

多くの韓国人の姿が見られるようになったセルティック・パーク。

 中村俊輔がセルティックでプレーしていた2年前と比べると、スコットランドの各チームとも様変わりした。セルティックのエイダン・マクギーディは昨夏スパルタク・モスクワへと移籍し、レンジャーズのケニー・ミラーも先日トルコのブルサスポルへと移っている。

 だが、今季はハーツが健闘しているものの、優勝争いを繰り広げているのはやはりセルティックとレンジャーズ。どれだけ時が経てど「2強独走」という勢力図は変わっていない。

 ピッチ外では思わぬ騒動を呼んだキ・ソンヨンも、ピッチ内では優勝を夢見るセルティックサポーターの心をしっかりと掴んでいる。加入当初はスコットランドの激しいスタイルに適応できなかったものの、すっかり馴染んだ今ではニール・レノン監督にとって欠かせない存在に。

 かつて中村がプレーしていた頃は多くの日本人ファンがセルティック・パークを訪れたが、今ではその数は激減。一方でスタンドにはキ・ソンヨンを見るために多くの韓国人の姿が見られるようになった。日本から韓国へ、セルティックとアジアの繋がりをキ・ソンヨンには人種差別を越え、今後も保ってほしいものだ。

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