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「私のプロレスラー人生、中野たむに出会えてよかった」スターダムの“妖精”なつぽいが愛憎渦巻く金網マッチの先に見た「最高なストーリー」

posted2022/07/03 11:01

 
「私のプロレスラー人生、中野たむに出会えてよかった」スターダムの“妖精”なつぽいが愛憎渦巻く金網マッチの先に見た「最高なストーリー」<Number Web> photograph by Masashi Hara

6月26日、名古屋国際会議場で行われた中野たむとなつぽいによる金網マッチ。数年間にわたる両者の因縁が、情念むき出しの名勝負を生んだ

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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「今、1つ目標が増えた。それは、たむちゃんを絶対倒すこと」

 昨年4月4日、女子プロレス団体スターダムの横浜武道館大会。なつぽいは中野たむの持つ白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)に挑戦し敗れると、そう口にした。

 その試合は、たむにとって初防衛戦だった。3月3日の日本武道館大会で、メインイベントでジュリアとの髪切りマッチを制し手に入れたベルトだ。奇しくも、なつぽいも同じ日にベルトを手に入れていた。プロローグファイト(本戦開始前)の第1試合で行われたハイスピード選手権でAZMを破ったのだ。

「最近のたむちゃん、気持ち悪いんだよね」

 王者同士で激突した昨年4月の白いベルト戦は、“昼ドラ”と評されるほどドロドロの感情がぶつかり合うものになった。2人の関係はアクトレスガールズ時代から始まり、一度は道が分かれながらもスターダムで再び巡り合った。アクトレスではなつぽい(当時は万喜なつみ)が団体トップの一角に位置しており、たむにとって越えられない存在だった。しかしスターダムでは日本武道館での試合順が象徴するように、たむが先を走っていた。両者の立場は以前とは異なるものになっていた。

 たむは“輝くスターダム・ドリーム”とコールされる。しかしその立ち位置は「全部捨てて、死にもの狂いで掴んだ」ものだ。だからこそ、なつぽいには負けられなかった。負けてしまったら、それまで必死に歩んできた道のりが否定されてしまうかのように感じられたからだ。

 そんな背景の一戦は、たむの勝利に終わった。「なにがなんでもなりたい自分になる」という目標を成し遂げた“スターダムの中野たむ”を体感したなつぽいには、新たな目標が芽生えた。そして、どこかスッキリした表情で「これが始まりだと思う」と語っていた。

 それから1年が経った今年の5月15日、後楽園ホール。

「最近のたむちゃん、気持ち悪いんだよね」

 試合後、マイクを持ったなつぽいが、いきなりたむを挑発し始めた。

【次ページ】 金網マッチという“因縁の終着地点”を超えて

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