川崎Fの現役選手も思わず「ウマっ！」 “プロ出場1試合”吉田勇樹コーチ（32）の「止める・蹴る」が今も上達し続けている理由とは？

　青天の霹靂とも言えたアシスタントコーチ就任。

　自分なりの試行錯誤を続けて6年目を迎えている。自身の現役時代、チームはタイトルに届かなかったが、コーチとして入閣した5年ですでに4度のJリーグ優勝を経験した。世間からは「絶対王者」や「常勝クラブ」と呼ばれ始めている。

　そんなチームの強さに貢献している自分の姿に「不思議ですよね」と吉田勇樹は言う。引退した時は想像もしていなかった未来にいるが、自分というピースにしか埋められない役割があるとも思っている。

「常に思っているのは、自分にしかできないことをしないと、自分がいる意味がないということですね。選手とコミュニケーションをとったり、練習に最後まで付き合うのは自分の役割です。そこは今も当時と変わっていません。自分にできること、自分にしかできないことをやらなければいけないと思ってます」

選手も思わず「ウマっ！」と唸った技術とは

　もっとも、最初はシュート練習のパス出しをする感覚を掴むのにすら苦労したという。

　川崎フロンターレでは、足元に出すボールは強いパスという前提がある。選手同士はもちろんのこと、その基準は練習に参加するコーチ陣にも求められるのだ。元Jリーガーである吉田であっても、練習で求められる緻密さには面を食らったと苦笑いする。

「最初のことをよく覚えているんですよ。沖縄キャンプのシュート練習で狩野健太くんの足元に強いパスを出そうとしたんですけど、全然ダメで……。まずいなと思って、次に少し丁寧なボールを出したら、『置きに行ってるね』と健太くんに見抜かれました（笑）」

2017年の吉田勇樹コーチ。一見すると指導者というよりも現役のサッカー選手だ　©KAWASAKI FRONTALE

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　興味深いのは、コーチとして教えているはずの吉田の技術も年々上達していることだ。これは昨年の話だが、クラブ公式の練習風景動画で吉田のスキルが話題になったことがある。

　当時1年目だった橘田健人が、居残り練習での「止める・蹴る」に手こずっていると、パス出しをしていた吉田が自ら見本を見せたのである。「いいよ、俺がやるよ。お手本ね。お手本、見せたらいいんでしょ？」と言い放ち、スムーズかつ正確な「止める・蹴る」の実技を披露。橘田は「ウマっ！」と声を上げたほどだった。

　吉田は現在32歳。選手ならばベテランと呼ばれる域だが、実は現役時代よりも足元が上手くなっているのではないだろうか。

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