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1000万DL超『ウマ娘』が描くウオッカvsスカーレットのライバル物語…“幻のエリザベス女王杯”に隠された「グッとくる」言葉とは?

posted2021/11/12 11:00

 
1000万DL超『ウマ娘』が描くウオッカvsスカーレットのライバル物語…“幻のエリザベス女王杯”に隠された「グッとくる」言葉とは?<Number Web> photograph by ©Cygames, Inc.

(左)レースに勝ち、麦茶を仰ぐウオッカ、(右)レースに勝ち、得意気なダイワスカーレット

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屋城敦

屋城敦Atsushi Yashiro

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©Cygames, Inc.

 女王は、ただひとり。

 エリザベス女王杯。“3歳以上の牝馬女王決定戦”として、名勝負が繰り広げられてきたレースだ。

 振り返ってみると、外国産馬ヒシアマゾンが勝利し新時代の到来を告げた1994年、エアグルーヴ、メジロドーベル、エリモエクセルという3世代のオークス馬が覇を競った1998年、スノーフェアリーが三冠馬アパパネを圧倒し“世界”の力を見せ付けた2010年など、枚挙に暇がない。

 しかし、誰もが観たいと願いながら、この舞台ではついに叶わなかったライバル対決もある。2007年、ダイワスカーレットが勝利した一戦。そこには、彼女の生涯のライバルであるウオッカの姿はなかった。レース当日の朝、右関節跛行のため出走を回避したのだ。かくしてチューリップ賞、桜花賞、秋華賞に続く宿命の対決第4ラウンドはお預けとなった。

 あれから14年、ウオッカも世を去り、幻のライバル対決などいまや昔のこと……と思いきや、いまだこの2頭の関係には熱い視線が注がれている。この“記憶の保存”に『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)というコンテンツが果たした役割は大きいだろう。モバイル、PCで展開中のゲームは1000万ダウンロード、テレビアニメ版Season2ではBlu-ray(『ウマ箱2』)が累計約70万本もの売上を記録(4巻合計、アニメBlu-rayは1巻につき1万本でも大ヒットと言われる)、さらにコミックス『ウマ娘 シンデレラグレイ』でも累計150万部突破と、エンタメの各分野で旋風を巻き起こしている。

 その魅力は各所で語られているところではあるが、中でも“現実の名馬たちの史実を、細部に至るまで徹底的に落とし込んだ設定やストーリー”が、競馬ファンにも、競馬を知らなかった人々にも『ウマ娘』が受け入れられている理由となっているのだろう。

髪の毛や衣装などは史実を忠実に再現

『ウマ娘』ならではのこだわりの設定は、勝負服姿などをみればよくわかる。

 ウオッカは全体的に黒っぽい毛色の印象があるが、分類的には鹿毛だった。その特徴のひとつが脚の先が黒色というもので、茶髪とトップス&ボトムズ、ブーツの黒色はそこから来ているのだろう。前髪の白い部分は、実際の流星と形も同じである。また、インナーや袖のカラーリングは馬主である谷水雄三氏の勝負服のものが反映されている。性格などの特徴にも史実のエピソードが盛り込まれている。ウオッカは純情で鼻血を出すシーンが登場するが、これは現実でも2度発症し、引退理由ともなった鼻出血を反映したものだ。

 ダイワスカーレットのデザインは、馬主である大城敬三氏の勝負服のカラーリングを反映したものだ。ソックスに入った青い2本のラインも、実際に巻かれていたバンテージと同じ。また、左の耳に赤いリボンが巻かれているが、それも尻尾に巻かれていたのと同じものだ。ちなみに、競走馬の尻尾に赤いリボンがついているのは“蹴りグセ注意”の目印である。

 そして主戦の安藤勝己騎手もよく語っていた「前向きすぎる性格」も忠実に再現されている。

【次ページ】 ウマ娘では「同室、同学年のライバル」

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