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宇野ヘディング事件&エモやん「ベンチがアホやから」から40年…後楽園と甲子園で起きた“2つの事件”が「巨人至上主義」の風潮を変えた?

posted2021/08/26 11:04

 
宇野ヘディング事件&エモやん「ベンチがアホやから」から40年…後楽園と甲子園で起きた“2つの事件”が「巨人至上主義」の風潮を変えた?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

1981年巨人対中日(後楽園球場)、7回裏に捕球を取り損ない、ヘディングしてしまう中日・宇野勝。左には驚きの表情を覗かせる大島康徳の姿も

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高木圭介

高木圭介Keisuke Takagi

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NIKKAN SPORTS

 あれから40年――。

 8月26日は、プロレス界ならば42年前(1979年)、ジャイアント馬場とアントニオ猪木が最後のタッグを結成した『夢のオールスター戦』(日本武道館=東京スポーツ新聞社主催)のことを指すが、プロ野球の世界では40年前(81年)、後楽園球場(巨人vs中日)で宇野ヘディング事件、甲子園球場(阪神vsヤクルト)で江本孟紀による「ベンチがアホやから事件」と、東西で事件?が発生した記念日なのである。

 若い方のために、当時の時代背景を説明しておこう。

 前年(80年)秋に巨人の長嶋茂雄監督が解任となり、続いて王貞治や高田繁といったV9時代を支えたスター選手が引退。81年の巨人は藤田元司新監督のもと、王が助監督に就任。東海大から原辰徳が入団し、ガラリと印象が変わっていた。巨人の話ばかりで恐縮なのだが、この時代はまだまだ「野球は巨人」の名残が強く、キー局のテレビ中継(※まだ地上波しか存在しない)も、ほぼ巨人戦ばかりという時代だった。
 
 そんな81年の夏休みも終わろうという8月26日(水)夜、TVは日本テレビ、ラジオはTBSで生中継されていた「巨人vs中日」にて、宇野ヘディング事件は起きた。

山本功児が放った平凡なフライを……

 残り試合数が25で、勝率は6割1分6厘。2位のヤクルトとは10も差がつき、この時点で巨人の優勝はほぼ確定的。5位・中日の先発は前年から続く巨人の「159試合連続得点記録」を自らの手でストップすることに執念を燃やす星野仙一だった。

 7回裏、2-0で中日がリードしつつ二死二塁の場面。1番・松本匡史の代打として登場した山本功児が平凡な内野フライを打ったところ、ショートを守る宇野勝内野手の右額付近を直撃し、ボールはレフトポール方面と転がってしまう……。

 レフトを守る大島康徳が慌てて捕球したものの、すでに代打で出塁していた柳田真宏はホームインして1点。三塁を回っていた山本功児はホーム前でアウトになったものの、1点を獲得した巨人の連続試合得点記録は160へと更新されてしまった。

 チームメイトの小松辰雄と記録阻止をめぐり“賭け”を行っていた星野は完封を逃がし、得点を献上した悔しさからグラブを地面に叩きつけて大激怒。なお試合そのものは2-1で中日が勝利している。これが球史に語り継がれる「宇野ヘディング事件」の大まかな顛末である。

【次ページ】 「助演男優賞」は星野仙一

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