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「野球やめなきゃいいな…」少年野球の現場で考えた“4~6mの差” なぜ“名キャッチャー”は生まれにくくなった?

posted2021/02/24 18:05

 
「野球やめなきゃいいな…」少年野球の現場で考えた“4~6mの差” なぜ“名キャッチャー”は生まれにくくなった?<Number Web> photograph by GettyImages

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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“流しのブルペンキャッチャー”として全国各地、数多くのアマチュア選手を取材、実際にボールを受けてきた筆者。昨年のプロ野球で100試合以上出場した捕手が全球団で2人しかいないことに気づく。なぜ球界の“名キャッチャー”はなかなか現れなくなったのか。(全2回の前編/後編へ続く)

 今回は「キャッチャー」の話だ。どうして『名捕手』といわれるようなキャッチャーが、なかなか現われなくなってきたのか? 壮大なテーマである。理由はいくつかあるのだろうが、ここでは、私の思うところを綴らせていただく。

 ある土曜日のことだ。通りすがりの公園の中に、ちょっとコンパクトな子供用の野球場があって、少年、少女たちが試合に興じていた。

 まだあまり野球の現場が開いていない2月初め。今年はコロナでキャンプ取材をあきらめたこともあり、きっと「野球の現場」に飢えていたのだろう……次に用事もあったのに、ついつい1時間近くも「立ち見」をしてしまった。

 子供たちの懸命なプレーをボンヤリ眺めながら、いろいろ考えた。

 背格好、雰囲気から、おそらく小学校の3、4年ぐらい。バッテリーと内野手4人は「少年」、外野は3人の「少女」たちが守っている。女の子が野球をするのは大賛成だし、小学生ぐらいの頃は、彼女たちの柔軟性は男子がかなわない長所だ。打つにしろ、投げるにしろ、野球の基本技能を身につけるにはとても好都合なことは、以前、自分で小学校世代を教えた時に感じたことだった。

 しかし男の子はどこ行ったんだ、とも思った。サッカーの方に行ってしまったのか、家で丸くなって、ゲームをやっているのか……。そんなことを考えていたら、目の前でボールとバットを手に奮闘している少年たちがいとおしくなった。

ツラそうな“少年キャッチャー”

 しかし、子供の野球の“お約束”で、投手はストライクが入らない。捕手が辛そうだ。構えた場所に来ないボールを飛びつくように捕りにいく。これぐらいの子供だと、投手に返球するのも一生懸命投げないと届かない。

  小学3、4年……私自身、野球に夢中になっていた頃だ。学校が終わると、公園や原っぱに一目散。ボールが見えなくなっても、見えないボールを、まだ追いかけていた。あの頃、こんなに辛そうな野球をしていただろうか。そういう記憶はどこを探しても出てこない。

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