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ついに実現「青森山田vs青森山田」 豪雨の中ぶつかるプライドと劣等感…涙の“直接対決”に密着

posted2020/10/07 17:01

 
ついに実現「青森山田vs青森山田」 豪雨の中ぶつかるプライドと劣等感…涙の“直接対決”に密着<Number Web> photograph by Takahito Ando

激しい雨の中、気迫みなぎるウォーミングアップを見せる青森山田の選手たち。先頭に立つのはセカンド主将を務めた3年・内間

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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Takahito Ando

 青森山田vs.青森山田――。

 10月4日、高円宮杯JFA U-18 サッカースーパープリンスリーグ2020東北・決勝。青森山田高校グラウンドで行われた「東北No.1」を決める試合は、少し異質なものとなった。グラウンドにあるスコアボードには「青森山田vs.青森山田セカンド」と書かれている。紅白戦ではなく、歴とした公式戦である。

セカンドもプリンスリーグで2度優勝

 まず、この試合の経緯を説明する。本来、この戦いは実現するはずのない試合だった。

 従来、青森山田は『高円宮杯U-18プレミアリーグ』に所属している。全国の強豪校やJクラブユース20チームが東西(EASTとWEST)に分かれ、2回総当たりのリーグ戦を行い、それぞれ東西の1位が一発勝負のチャンピオンシップで日本一を決める、この世代の最高峰リーグだ。同校は2011年に創設された同リーグにおいて、高体連チームとしては史上最多の2度の優勝を誇っている。

 大所帯である青森山田はこの下にセカンド、サードと複数のチームを持つ。これは強豪校やJクラブユースにも見られることだが、青森山田のセカンドチームは、プレミアリーグの1つ下のカテゴリーである『高円宮杯U-18プリンスリーグ』(全国9地域)の『東北プリンスリーグ』に所属し、そこで2017年度と2019年度に2度の優勝を果たしている。

 この結果だけ見ると、青森山田のセカンドチームもプレミアリーグで戦う力があるのでは?と思う方もいるかもしれないが、同じ高校またはクラブで同一リーグに所属することはできない。さらに高校年代のリーグではこのプレミアリーグ、プリンスリーグの下に各都道府県1部、2部とレベル別にリーグが整備されており、セカンド以下はトップのカテゴリーに準じて決められる。それゆえ、公式戦で同校同士の対戦は実現しないのだ。

 だが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でそのレギュレーションが大きく変更された。

勝ち上がった、正真正銘の決勝戦

 従来のプレミアリーグは解体され、移動距離の関係上、プレミアリーグWESTの全チーム、EASTの2チームがそれぞれの地域のプリンスリーグに加わり、名称も『スーパープリンスリーグ2020』に変わった(首都圏にある他の8チームは『プレミアリーグ2020関東』としてリーグ戦を戦う)。

 そのため『スーパープリンスリーグ2020東北』は、『プリンスリーグ東北』に参戦予定だった10チームに加え、プレミアリーグEASTを外れた青森山田と東北2種委員会推薦によって選出されたブラウブリッツ秋田U-18の12チームで開催。AとBの2つのグループに分け、1回戦総当たりで最終順位を決めるレギュレーションとなった。

 そこで勝ち上がってきたのが、青森山田のトップとセカンドだった。

 トップはAグループを5戦全勝、37得点1失点という圧倒的な数字で制し、セカンドは尚志(福島)ら強豪校がいるBグループを4勝1分の無敗で突破。つまり、正真正銘の決勝戦だったのだ。

【次ページ】 試合当日、ベンチに入らなかった黒田監督

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