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ロナウドを交代させたファンの声。
いまのJにある“空気”は根付くか。

posted2020/08/01 11:30

 
ロナウドを交代させたファンの声。いまのJにある“空気”は根付くか。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

静寂のスタジアムで聞こえた選手やファンのリアルな声。サポーターの歌声や手拍子もいいが、また異なった趣を感じることができた。

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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J.LEAGUE

 オルンガがハットトリックを達成した、柏レイソルとベガルタ仙台の一戦。ソーシャル・ディスタンスが守られた記者席で、私は多くの音を耳にした。

 周りの木々から聞こえてくる蝉の鳴き声。轟音をとどろかせる飛行機のジェット音。そして遠雷。前半途中ににわか雨が降り出すと、日立台は耳慣れない乾いた音に包まれた。2500人の観衆が、一斉に雨合羽を着込み始めたのだ。

 それらはJリーグのゲームで、初めて耳にする音だった。

 新型コロナウイルスのパンデミックによって、28年目のJリーグは多くの制約の中で行なわれている。入場者は制限され、太鼓をたたくことも肩を組んで歌うこともできなくなった。

 こんなルール、もちろんないほうがいいに決まっている。だが制約の副産物として、いいものがもたらされた。

 静けさである。

スタジアムが静寂に包まれる時間。

 海外(とひと括りにするのは乱暴だが)でサッカーを見ていて、私が好きなひとときがある。スタジアムが静寂に包まれる時間だ。

 ヨーロッパや南米のファンは呆れるほど情熱的だが、それでもずっと大声で歌っているわけではない。彼らは愛するチームに深く心をつかまれているので、大事なところでは固唾を呑み、もしくはぶつぶつ言いながら、にらみつけるようにしてゲームを凝視する。

 そんな時間があるからこそ、ゴールが決まると信じられない盛り上がりが生まれる。

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