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DeNA「あきらめない野球」の原点。
多村仁志の7点差逆転サヨナラ弾。

posted2020/05/10 11:40

 
DeNA「あきらめない野球」の原点。多村仁志の7点差逆転サヨナラ弾。<Number Web> photograph by Kyodo News

2013年5月10日、多村(左から3人目)が逆転サヨナラ3ランを放った。

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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Kyodo News

 もしかしたら、この一戦が現在へとつづく“大河の一滴”だったのかもしれない。

 当時、横浜DeNAベイスターズの監督を務めていた中畑清は、昨日のことのように興奮の坩堝と化した横浜スタジアムの情景を思い出す。

「俺が一番喜んでたんじゃないか。真っ先にベンチから飛び出ていたからね(笑)。原(辰徳)監督のあの悔しそうな顔は今でも忘れられないよ。どうだ参ったかって、本当の意味でリベンジできたよね。あれで俺の監督業は終わったよ。いやまあ、冗談だけどさ」

 まるで歌うような快活なキヨシ節。多くのDeNAファンにとっても留飲を下げた試合だったに違いない。

主役は7季ぶり復帰の多村仁志。

 遡ること7年前、DeNA体制になって2年目の2013年5月10日。過ごしやすい気候のなかで行われた巨人戦、主役となったのは、この年、7シーズンぶりにソフトバンクから古巣へと復帰したベテランの多村仁志だった。

 試合は7回表が終わった時点で巨人が10対3で大量リード。このシーズン、DeNAは開幕から巨人に5連敗を喫しており、いつもと変わらぬ苦手意識を露わにしていた。ハマスタには「また勝てないのか……」という雰囲気が充満していた。

 ところが7回裏、DeNA打線が突如として目を覚ます。まずノーアウトでルーキーの白崎浩之がセンター前ヒットで出塁すると、ここで代打に多村が送られた。多村は開幕ベンチ入りをしていたが、調子がよかったにも関わらず4月22日に登録抹消され、この日に再昇格していた。ファームでは3本塁打を放ち好調を維持しており、大事な巨人戦を前に声がかかっていた。

 そして初球、多村は高木京介が投じた高めに浮いた変化球を捉え、レフトスタンド上段へ飛び込むホームランを放った。大きな放物線を描く“ホームラン・アーチスト”と呼ばれた多村らしい一発だった。

【次ページ】 7連打で、あっという間に1点差。

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