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誰もが「天才」と呼ぶ西川龍馬。
1番打者として開花した広島の才能。

posted2019/08/19 20:00

 
誰もが「天才」と呼ぶ西川龍馬。1番打者として開花した広島の才能。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

広島の1番・西川龍馬は7月にプロ野球史上初の4カード連続で先頭打者ホームランを記録した。

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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Nanae Suzuki

 ようやくたどり着いたステージから見た景色も、クールなバットマンにとっては特別なものではなかったようだ。

 広島・西川龍馬がプロ4年目の今年、8月17日DeNA戦の3回表の第2打席でシーズンの規定打席到達となる443打席に到達した。シーズン開幕前に掲げた目標の1つをクリアしても、苦しいチーム状況に笑顔なく「初めて達成できてうれしい」と控えめに喜びを口にした。

 試合に出続けることで疲労は蓄積され、データを集めた相手からのマークも厳しくなる。だが、そんな周囲の不安など、どこ吹く風。

「疲れはない。やっぱり試合に出られることはいい」

 打席にコンスタントに立ち続けられることは、喜びであり、プラスしかないと感じているようだ。

転機となった外野手転向。

 これまでも、試合に出れば結果を残してきた。明るく前向きな性格も、自ら進んで表に出るタイプではない。ただ、バットでは雄弁に自己主張してきた。

 広島の4番・鈴木誠也と同じ1994年生まれ。高卒の鈴木に遅れること3年。敦賀気比から王子を経て、2015年ドラフト5位で広島に入団した。

 入団時から打撃技術を高く評価され、1年目から代打として存在感を発揮した。昨年まで毎年、シーズン成績を伸ばしてきた。出場試合数だけでなく、安打、二塁打、三塁打、本塁打、打点、盗塁、OPS……すべての数字を年々上げてきた。

 そして今季、外野手転向をきっかけに大きく飛躍した。

 昨季は一時、三塁手の1番手となり自己最多107試合に出場するも、リーグワーストの17失策を記録したことでシーズン終盤からは控えに回ることになった。守備の負担を減らすため、そして高い打力を生かすためのコンバートだった。

 周囲が驚くほどのスピードで外野手として成長し、今では広島のセンターラインを形成する中堅を任され、しっかりとこなしている。8月16日DeNA戦では守備固めで入った野間峻祥が左翼に就き、西川がそのまま中堅を守るほどの信頼感を得ている。

【次ページ】 マスコットバットさえも握らない。

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