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新しい地図・稲垣吾郎×車いすラグビー。
日本代表選手が語る、戦略と言霊。

posted2019/08/02 07:00

 
新しい地図・稲垣吾郎×車いすラグビー。日本代表選手が語る、戦略と言霊。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

稲垣吾郎に車いすラグビーの魅力を語った(左から)乗松聖也、倉橋香衣、池透暢。

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Asami Enomoto

 かつてその激しさから「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれたこともある、車いすラグビー。車いす同士が真っ向から衝突する激しさはあるものの、実は緻密な作戦と駆け引きが求められる男女混合の競技だ。

 障害の程度によって選手に持ち点が設定され(0.5~3.5)、障害が軽いほど点数が高く(ハイポインター、オフェンス中心)、重いほど低い(ローポインター、ディフェンス中心)。チームはコート上の4名の合計点が8点以内で構成され、顔ぶれによってどう戦略が変わるのかも見どころだ。

倒されると「お前、やるな」。

稲垣 僕は昨年の日本選手権で初めて車いすラグビーを観戦しました。なにより驚いたのが、車いす同士がぶつかり合うときの音。他の競技であんなに大きな音を聞いたことがなくて、その迫力に興奮してしまいました。車いすに乗ってタックルを受ける体験もしましたが、ものすごい衝撃でした。試合中に選手はタックルを受けて倒れることもあったのですが、実際みなさんは怖くないんですか?

乗松 初めは怖かったですよ。見学に行ったときは、僕もまずその音に驚きました。「これを自分がやるのか……」と。それまで車いすバスケをやっていましたが、車いすラグビーほど激しくありませんでしたし、しばらくは辛かったです。でも、恐怖に打ち勝って良いプレーができたときの気持ち良さはクセになっていきました。

 僕は持ち点3のハイポインターなので、より強いタックルが求められます。ハイポインターは自分のパワーに自信を持って相手を倒しに行く選手ばかりなので、いざ自分が倒されると、思わず「お前やるな」という感じでニヤリとする選手もいますね。倒し倒されることを楽しんでいるような空気もあるんですよ。

稲垣 へー! なんだか、ぶつかり合った者同士に友情が芽生えそうだな。

 強いタックルは見せ場でもあり、お客さんの熱気も一気に上がります。海外ではビール片手に盛り上がる人も多いんですよ。

稲垣 僕が観に行ったときも男性ファンの方々の血の気がすごくて……。倉橋選手は日本代表で唯一の女性ですが、男性選手に囲まれて恐怖心はなかったんですか?

倉橋 怖いと思ったことは一度もありません。私は大学生のとき、トランポリンの練習中に首の怪我をして頸髄を損傷し、障害を負いました。入院していたとき、看護師さんからは「危ないから気をつけて」と色々と行動を制限されていました。

 もともと運動が大好きだったので、当時は自由に動けないのがもどかしかった。でも車いすラグビーはぶつかり合いが認められていて、倒れても笑っている競技。それがいいなと思って始めたので、ぶつかっても「こんなに揺れた!」「わ! 飛んだ!」って楽しんじゃってます。

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