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<欧州サッカー育成秘話> ギャレス・ベイル 「爆走する技と頭脳」 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2011/02/01 06:01

<欧州サッカー育成秘話> ギャレス・ベイル 「爆走する技と頭脳」<Number Web> photograph by Getty Images
今シーズン、大ブレイクを果たし、飛躍を遂げたトッテナムのギャレス・ベイル。
プレミアを席巻する若きウインガーはいかにして見出され、磨き上げられたのか。育成にまつわる逸話とともに、その成長の足跡をたどる。

 昨秋のCLインテル戦2試合の活躍で、ギャレス・ベイルの評判は一躍ドーバー海峡を越えた。左サイドを爆走しては、ファーポスト内側に狙いを定めたシュートでハットトリックを決めた初戦。再びタッチライン沿いを独走し、完璧なクロスで2アシストを演じたリターンマッチ。トッテナムのウィンガーには、インテル役員の元名ウィンガー、ルイス・フィーゴも「驚異的」と舌を巻いた。

 だが、素顔のベイルには「純朴」という表現がよく似合う。インテル戦の合間に与えられたオフを、海外ではなくウェールズの実家で過ごした話は有名。「スター誕生」とメディアで騒がれても、「サッカーを続けられれば幸せ」と至って謙虚だ。

 ブレイクの下地は9歳から8年間を過ごしたサウサンプトン(現3部)で形成された。当時のアカデミー責任者はヒュー・ジェニングス。育成畑では定評があり、「各自がボールに触れる機会を増やし、状況判断に慣れさせるため」と、率先してミニゲームを採用した人物でもある。指導の成果は、ベイルの安定したボールタッチや、ラストパスとシュートの的確な判断などに見て取れる。14歳頃に1500mを4分8秒で走ったという「脚」と「肺」の持ち主は、「技」と「頭脳」も磨かれていった。

ベイルのジンクスを破ったレドナップ監督の起用。

 また、「ピッチ外を軽視するクラブが多い」と嘆くジェニングスは、精神面のケアも重視する。一人っ子で内気なベイルが、テオ・ウォルコット(現アーセナル)と寮で同室になったのも偶然ではないだろう。「ふたりとも部屋でゲームをしたり家族や友人と食事をしたりするのが好きなんだ」とベイル。北ロンドンでライバル関係にある現在もウォルコットと仲が良い。

 17歳でトッテナムに引き抜かれると、足首の怪我や監督交代で試練の時を迎えたが、移籍後3人目の監督には人心掌握に長けたハリー・レドナップが就任した。一昨年9月、レドナップは、出場すれば負けるという状況が25試合続き自信を失くしていたベイルを、大量リードした試合終盤に投入。ジンクスを破らせた。続いて左SBからウィンガーへのコンバートも功を奏し、レギュラーに完全に定着した今季は前半戦だけで11得点を挙げている。

 指揮官は最終的にはベイルを攻撃的SBに戻す意向というが、当人は「監督に従うよ。僕はプレーできれば満足さ」と話す。プレミアで最もホットな21歳は、ピッチ上で最も楽しそうな選手でもある。

◇       ◇       ◇

Number771号『天才プレイヤーの創り方~欧州サッカー育成最前線~』では、「7つの育成秘話」として、ベイルの他、パストーレ、ウィルシャー、バロテッリ、キャロル、ディマリア、ヘベデスら、溢れる才能を爆発させる若手選手たちの成長の軌跡を辿ります。

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