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低迷するキャブスで光る、
ジェイミソンのプロ意識。
~NBAに響く“Let It Be”~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byNBAE/Getty Images

posted2011/01/29 08:00

派手なスタイルではないが、得点力、リバウンド力に加えてスピードもある万能型の選手

派手なスタイルではないが、得点力、リバウンド力に加えてスピードもある万能型の選手

 マイアミ・ヒートのレブロン・ジェイムスいわく、彼らは“ヒートルズ”なのだという。ビートルズのように、どの街に行っても注目される存在というわけだ。その喩えで言えば、去年夏にジェイムスに去られたクリーブランド・キャバリアーズ(以下キャブス)は、差し詰め、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが抜けたビートルズだろうか。

 昨季はリーグ最高成績の人気チームだったキャブスだが、今季は注目されなくなり、成績も、1月18日現在リーグ最下位の8勝32敗と、一気にリーグ底辺まで落ちた。12月は1回しか勝てず、年が明けてからも、1月11日ロサンゼルス・レイカーズ戦で記録的な55点差の敗戦という屈辱を味わうなど、惨憺たる状況だ。故障が相次いでいることも不振の一因とはいえ、あらためてジェイムスの存在の大きさを感じさせられる。

 残されたキャブスを引っ張るのは、プロ13年目のベテラン、アントワン・ジェイミソンだ。どんな状況にも文句を言わず、黙々とプレーし続けるプロ中のプロだが、正直、巡りあわせがいい選手ではない。去年2月には低迷するワシントン・ウィザーズから優勝候補のキャブスにトレードになり、ようやく彼の努力も報われるかと思ったのだが、東カンファレンス準決勝で敗退。その後ジェイムスがチームを離れたことで、優勝の夢がまた遠ざかってしまった。

ジェイムスを恨むでもなく、自分の不運を嘆くでもなく。

 それでも、ジェイミソンは、強豪チームへのトレードを要請することもなく、黙々とプレーし続けている。

「僕は去年、チャンスをもらった。最高の選手とともにプレーできた。あの経験が2カ月しか続かなかったのは残念だったが、でもチャンスには恵まれた。後悔はない」とジェイミソンは言う。

 出て行ったジェイムスを恨むでもなく、自分の不運を嘆くでもなく、チャンスがあったということに感謝するというのだ。

「もし、またチャンスが巡ってくるならそれもいい。でも自分から『トレードしてくれ』とは言わない。今はとにかく毎晩、コート上で競うだけだ」

 まさに『レット・イット・ビー』である。その言葉には、運命をこじ開けてでも頂点だけを追い求める激しさはない。しかし、これもプロとしてひとつのあり方なのだと思わされるのだった。

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