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中村俊輔「今のままじゃ勝てない」
J1参入決定戦3時間前、磐田の真実。

posted2018/12/29 11:00

 
中村俊輔「今のままじゃ勝てない」J1参入決定戦3時間前、磐田の真実。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

ジュビロのJ1残留は総合力の勝利だった。その中には、中村俊輔の力も確かに存在したのだ。

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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J.LEAGUE

 ピッチの外でもアシストはできる。

 12月8日、J1参入プレーオフ決定戦の3時間前。ジュビロ磐田は大久保のクラブハウスに集まり、決戦の場となるヤマハスタジアムに向かう準備を整えていた。

 控えに回った中村俊輔が動いた。名波浩監督から許可をとりつけて、急いで選手を呼び寄せたのだ。緊急の選手ミーティングが開かれた。

 中村はこう切り出したという。

「今のままじゃ勝てないと思う」

 突き刺さるようなみんなの視線を受けてから、ちょっと表情を緩めたそうだ。

「それはウソ」

 安堵の視線に逆らうように、今度は表情を引き締める。

「今“何だよ俊輔”ってむかついた人は大丈夫。でもむかつかなかった人は、ここからの時間で気持ちを整理したほうがいい」

 言葉は続く。

「俺たちはプロ。始まりの笛がなったら気持ちのスイッチは入るし、アドレナリンは出るし、戦える。それは分かっている。でもちょっとでも不安があったら、ダメになってしまうことがある。試合まで時間はある。自分のなかにある不安を整理して試合を迎えよう」

チームを静かに導いた俊輔の表現。

 不安を整理する――。

 勝とう! チームのために! 応援してくれる人のために!

 モチベーションを一気に引き上げていくような、そういった言葉は一切なかった。試合までの時間をどう使っていくべきかを、彼なりの表現で静かに伝えた。

「不安を消せ」だと、余計なパワーを使ってしまう。スタジアムまでに移動するバスのなかで、静かに己と向き合い、理解して納得して「整理させる」。

 簡単に言えば“俺は気持ちの準備はできている。みんなはどうだ?”との問い掛け。まだなら、今からやればいい、それだけのこと。

【次ページ】 俊輔は空気を察知して動いた。

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