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レアルの日本人社員だった男。
酒井浩之「実は言うほどお金がない」

posted2018/09/05 17:00

 
レアルの日本人社員だった男。酒井浩之「実は言うほどお金がない」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

外から見るか中から見るかで、レアル・マドリーの印象はどうやら大きく違うらしい。酒井氏はその実情を知る唯一の日本人と言ってもいい。

text by

北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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photograph by

Yuki Suenaga

 えっ、お金がない?

 第1のギャップは、そこにあったという。レアル・マドリー(スペイン)の正社員として働いていた酒井浩之氏の言葉だ。

「もちろん、売り上げは大きいですが、出て行く額も大きい。だから、キャッシュフロー(収入から支出を差し引いて手元に残る資金の流れ)はごくわずかなんです」

 要するに、世間一般でイメージされているような金満クラブではない、と。確かに、マドリーには莫大な損失を出した場合、それを補填しうる大企業や大富豪が存在しない。そもそもクラブのオーナーはソシオと呼ばれる約9万人のクラブ会員だ。

 下手を打てば、大変な負債を抱え込んでしまう。サッカー界随一のブランド力を持つとはいえ、その上にあぐらをかいては経営破綻へ一直線。そんなシビアな環境にある、というのが、酒井氏の実感らしい。

 酒井氏は2015年3月、日本人としては初めて、レアル・マドリー大学院のスポーツマネジメントMBAコースに合格。そして、卒業と同時に同コースからただ1人マドリーへの入社が認められ、デジタル領域を中心としたコミュニティ・マネジャーとして、日本市場とのリレーションに従事していた。

「スペインには本当にお金がない」

 現在は独立し、株式会社『Hiro Sakai』の代表取締役。マドリーの正社員時代に築いた人脈を活かし、スポーツマーケティング関連のビジネス・コンサルティングや代理人業務など幅広い活動を行なっている。その酒井氏が、しみじみと語っていた。

「スペインには本当にお金がない。だからこそ、いい加減な経営戦略では、とてもやっていけないんです」

 例えば、スタジアムツアーも資産を生かす施策の1つだ。日本代表が2002年にスペイン遠征でレアル・マドリーとフレンドリーマッチを行なったが、その際に日本の報道陣がスタジアムツアーに招待されたのを覚えている。ちょうど会長のフロンティーノ・ペレスの改革が始まった頃だ。

【次ページ】 3億円もらったら、30億円分返す。

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