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W杯中のフランス代表の日常生活。
メディア戦争、金、そして家族愛。 

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フランソワ・ベルドネ

フランソワ・ベルドネFrancois Verdenet

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photograph byPierre Lahalle

posted2018/07/29 08:00

W杯中のフランス代表の日常生活。メディア戦争、金、そして家族愛。<Number Web> photograph by Pierre Lahalle

デシャン監督が綿密に隠していた練習風景。『フランス・フットボール』誌はあらゆる手段を使って、撮影を敢行した。

FF誌の先発予想は100%的中した。

 彼らはときに練習の始まる2時間前から、練習場からちょっと離れた階段裏の小部屋に身を隠す。

 吐き気を催すほどの悪臭に耐えながら、代表チームスタッフから厳重警戒を要請された地元警備員たちの厳しい監視の目を逃れるのだった。

 別の“情報スナイパー”は、近くの学校の貯水槽の陰から様子を窺った。

 だが、さらに驚くべきことが、そこから数百メートル離れたところで起こっていた。

 アパートの住人に小銭を握らせた記者たちが、想像もしえない場所からの代表チームの練習風景の監視に成功したのである。“バクシーシ(喜捨)”は見事に功を奏したのだった。双眼鏡の威力は絶大だった。

 デンマーク戦でフランスは、前のペルー戦から6人先発を交代した。だがグループリーグの3試合に関して、先発予想は100%の正解率でたったひとつの間違いもなかった。

 読者には僥倖だが、代表監督であるデシャンにとってはそうではない。

 アルゼンチン戦を前にデシャンは、ジャーナリストたちを1カ所に集め、練習時間も直前まで明かさず、宿泊地内の閉ざされたハーフコートでトレーニングを敢行したのだった。

ベスト16だと協会からのボーナス無し!

 選手たちにとって準々決勝進出は、経済的に“ジャックポット(スロットマシンの大当たり)”を引き当てたことを意味する。

 ロリスとグリーズマン、マテュイディ、バランからなる《賢人会議》は、グループリーグ突破とベスト16進出については、協会とボーナスの交渉は何もしなかった。彼らが要求したのはベスト8進出以降のボーナスだった。

 フランスサッカー協会のノエル・ル・グラエ会長との間には、3月末に合意が成立していた。

 それによると選手たちは、FIFAから支払われる報奨金の30%を手にすることができる。準々決勝に進めば協会はFIFAから1400万ユーロを受け取る。準決勝(4位)なら1900万ユーロ、3位は2000万ユーロ、準優勝は2300万ユーロ、優勝すると3200万ユーロである。

【次ページ】 「金のためにロシアに来たわけじゃない」

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