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北朝鮮もアイスランドみたいに。
ヴェルディ李栄直がW杯で得た熱。 

text by

海江田哲朗

海江田哲朗Tetsuro Kaieda

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/07/27 08:00

北朝鮮もアイスランドみたいに。ヴェルディ李栄直がW杯で得た熱。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

鄭大世や梁勇基らJリーグの歴史を彩ってきた北朝鮮代表の選手たち。李栄直もその1人となれるか。

攻撃的ポジションでゴール量産。

 ロティーナ監督は言う。

「トレーニングで、ヨンジのゴール前での動きに着目しました。とてもダイナミックなよいプレーをする。これならよりボックスの近くに配置したほうが得策だろうと」

 固定観念に囚われない指揮官は、選手に新たな役割を与えることを一切躊躇しない。インサイドハーフやウイングといった攻撃的なポジションで李を起用し、ここまでリーグ戦で3得点、天皇杯で2得点と結果を導き出している。

「プロになってから前目のポジションに入るのは経験がないので、手探りの状態ですよ。いつも一杯いっぱい。ディフェンシブな位置とは景色がまったく違い、相手を背負ってプレーすることも多い。常に首を振って周囲の状況を確認しているんですが、一瞬の間で寄せられ、プレーがワンテンポ遅れる。試合のあとで映像を見返すと、ドヘタやなあと自分に呆れてばかりいます」

 狭い空間を打開するワンタッチプレー、得点に絡める位置取り、とにかくいまは場数を踏み、感覚をつかむことだと自らに言い聞かせ、チャレンジを続ける。むろん、ミスは出てくるが、取り返せないミスはない。それが李のモットーであり、生き方だ。

むき出しのハートのような感情表現。

 就任2年目のロティーナ監督の戦術が浸透し、東京Vのサッカーはより一層の安定感を手にした。その反面、大崩れこそしないが、平坦に流れすぎるきらいがある。いわば、句読点のないサッカーとでも言おうか。こう着状態を打ち破れず、したがってシーズン前半は勝点を思うように伸ばせなかった。

 そこで、李は果敢なシュートやボール奪取で、句点、読点をビシバシ打ち込む。前のめりなプレーがチームにダイナミズムを与え、息の詰まりそうなゲーム展開における空気穴となった。加えて、むき出しのハートを思わせる豊かな感情表現で、スタンドの盛り上げにも一役買っている。

 シーズン後半の追い上げに向けて、東京Vはガンバ大阪から泉澤仁、ヴィッセル神戸からレアンドロと大型補強を敢行。前線の競争は激化し、李はさらなる正念場を迎える。

【次ページ】 アジア杯で“やれるぞ”を見せる。

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