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16日ぶりにプロ野球が帰ってきた。
カープは広島の希望になるべく戦う。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2018/07/23 17:00

16日ぶりにプロ野球が帰ってきた。カープは広島の希望になるべく戦う。<Number Web> photograph by Kyodo News

巨人3連戦はいずれも劇的な展開で3連勝。最短で27日にも3連覇への優勝マジックが点灯する。

カープは復興の光になれるはず。

 自然の猛威を目の当たりにする度、筆の無力さを痛感させられるが、プロ野球選手は違う。東日本大震災のときは新井選手会会長を中心に12球団がまとまり、東北に本拠地を置く楽天が支援活動を続けている。'95年の阪神大震災のときには、オリックスが「がんばろうKOBE」を掲げて復興の光となった。

 広島カープもきっと、そんな存在になれるはず――。そう感じさせたのが、広島でプロ野球が再開した20日からの巨人3連戦だった。

 朝からマツダスタジアムの正門前にファンが列をつくり、プレーボールを待ちわびるようにスタンドはすぐに真っ赤に染まった。そして変わらぬ大声援。いつものように広島ナインの背中を押す。

球団初の3連覇に近づく3連勝。

 ファンが作り出した最高の舞台で、広島ナインが示した姿は「あきらめない」というものだった。

 序盤から大量7点を奪って優位に試合を進めながら、終盤に追いつかれ、延長10回には勝ち越された。その裏、あとアウト1つから途中出場の下水流昂が一振りで試合をひっくり返した。

 巨人マシソンの外角球をたたいた打球は右翼方向へ上がり、「自分でもびっくりするくらいうまく打てた。みんなの思いが乗った本塁打でした」と振り返るように広島ファンで埋まった右翼ポール際に吸い込まれた。

 何度も起こしてきた逆転劇に、殊勲者下水流は「(逆転で)勝ってきていることが自信になっている。何とかなると。それをファンも感じてくれている」とベンチ、スタンドが一体となった勝利と表現した。

 ペナントレースという視点で見たとき、優勝争いに大きな影響を及ぼすと思われていた、この巨人3連戦を広島はすべて逆転で勝利。3連勝で球団初の3連覇に近づくとともに、広島に勇気を与えた。

【次ページ】 「あきらめない」男たちの姿。

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新井貴浩
西川龍馬
永川勝浩
下水流昂
広島東洋カープ

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