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内海哲也は何を取り戻したのか。
ストレート比率が増えて復活の3勝。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKyodo News

posted2018/07/21 09:00

内海哲也は何を取り戻したのか。ストレート比率が増えて復活の3勝。<Number Web> photograph by Kyodo News

二桁勝利は2013年の13勝を最後に遠ざかっている内海哲也。後半戦G投の牽引役を担いたい。

年を追うごとに直球の比率が下がっていた。

 もともと内海の最大の武器は切れのいいスライダーで、そのスライダー以外にもチェンジアップやツーシーム、フォークなど多彩な変化球を操って相手打者を抑え込むというのが基本のピッチングスタイルになっている。

 そのためもともと全投球に対する真っ直ぐの投球比率は'14年が35.4%(データはデルタ社データサイト)、'15年が32.7%とそれほど高い投手ではなかった。

 ただ'16年あたりから、ただでさえ少なかったストレートの比率がさらに少なくなってこのシーズンは27.8%まで落ち込む。そうして2勝に終わった昨シーズンには、ストレート率は22.3%まで落ち込んでいたのである。

 変化球でかわす意識が強くなっているのが、数字でもハッキリと出ていた。

 だが、逆に真っ直ぐの平均スピードは'14年の135.9キロに対して昨年は137キロとむしろわずかだが速くなっている。そうした詳細データから導き出されたのが、「もっとストレートを増やしていく」ということだったのだ。

130キロ台の直球が幅を広げた。

 そのためにも必要なのは「速さではなく切れのある」ボールで、そこに磨きをかけるのがファームで復活にかけた左腕の1つのテーマだった訳である。

 5月10日。今季初登板の阪神戦。85球投げた内海の投球で、真っ直ぐは33球と比率的には39%まで上がっていた。その他の球種はスライダーが21球、ツーシームが11球でチェンジアップとフォークがそれぞれ16球と4球という内訳だ。許した4安打中、真っ直ぐを打たれたのは2本だったが、それでも被打率は6分1厘である。

 7月16日の阪神戦では決して調子はよくなかったが、それでも全94球中、ストレートは32球で比率は34%。

 4回無死一、二塁のピンチでは阪神の中谷将大外野手を136キロで二飛、続く梅野隆太郎捕手を137キロで左飛といずれもストレートで打ち取り、最後は投手のメッセンジャーをツーシームで投ゴロに仕留めて切り抜けた。

 ここ数年の傾向だと変化球でコーナーを狙って、四球から自滅するのがパターンだったが、そこを真っ直ぐで押し切った。

「開き直って投げようと思った。1人、1人抑えていきました」

 試合後にこう振り返った内海の言葉通りに、変化球の多投でかわす意識を捨ててときには開き直ってストレートで勝負する。そうすることで投球の幅は広がり、逆に変化球の威力も取り戻すことにつながったのである。

【次ページ】 高橋由伸監督も逆転の野望を?

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