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栗山監督が、ポーランド戦の西野采配
に共鳴した。覚悟が宿った決断とは。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2018/07/06 17:00

栗山監督が、ポーランド戦の西野采配に共鳴した。覚悟が宿った決断とは。<Number Web> photograph by Kyodo News

日本ハムでの6年間で2度のリーグ優勝を果たしている栗山監督。今シーズンも7月5日現在、首位と2ゲーム差の2位につけている。

無茶、無理を言っても受け入れてくれる。

 栗山監督は、同点で延長に突入することも想定していた。「この前、ケンシが『ショートをやっていた』と言っていたから、そうしようかなと」と笑った。ケンシとは、杉谷拳士(けんし)選手である。ユーティリティー・プレーヤーではあり外野はすべてを務めるが、内野は基本的に二塁手である。

 昨オフに参戦していたオーストラリアでのウインターリーグで遊撃に就いたことがあるとの会話を耳にし、それだけで延長戦の布陣をシミュレーションしていたのである。

 その青写真のまま、9回で思惑通りにケリをつけた。ギャンブルにも、試合にも勝った。無邪気にはしゃぐ選手たち。ペットボトルの水のシャワーが降り注ぐ歓喜の光景を見つめている時の胸中は、指揮官ならでは、である。

「みんなに迷惑を掛けなくて良かったなあ、と。その思いが一番だよね。うちのコーチの素晴らしいところは、オレが『こうして!』と言い切った時には、それを受け入れてくれる。いつも無茶、無理を言ってもね。だから、なおさら迷惑掛けなくて良かった、と思う。ホッとした、という感じが本音だよね」

采配が発信源となる選手への以心伝心。

 この試合、さらに深く安堵する隠し味もあった。ベンチ登録していたある投手が、諸事情で登板を見合わせる可能性が高かったのだ。そこまで投手4人を起用していた。延長戦へともつれた場合、通常時よりも投手陣の不安が、やや増大していた一戦だった。それでも、勝負手を打ったのである。

 競技も、重圧のジャンルも違う。シンプルに比しては失礼かもしれないが、西野監督と同様の思考が存在したのではないだろうか。

 西野監督は、ベンチスタートの長谷部選手を投入して守勢に出て、決勝T進出を勝ち取った。

 栗山監督が、後先を考えずに繰り出した采配。謙遜しながら秘めた狙いを明かした。

「それが選手たちへのメッセージになったのかは、オレには分からない。でも9回、ここで勝ち切ろうとは思っていた」

 直接の言葉ではなく、ジェスチャーでもない。采配が発信源となる選手への以心伝心、そして導かれる結末がある。

 サヨナラ勝ちと、西野ジャパンに胸を躍らせた2日間。リーダーが示す覚悟は、強烈な感動と、痛快なドラマを演出するのだと確信したのである。

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栗山英樹
北海道日本ハムファイターズ
西野朗

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