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“最弱”イタリア、W杯のなでしこ。
「魂の入った」日本代表を見たい。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/06/19 12:30

“最弱”イタリア、W杯のなでしこ。「魂の入った」日本代表を見たい。<Number Web> photograph by Getty Images

60年ぶりにW杯出場を逃したイタリアだが、ユーロ2016での戦いぶりから日本も学べるところがある。

死力を尽くした守りと魂のハードワーク。

 ところが、蓋を開けてみると、イタリアはグループリーグを首位で突破し、決勝トーナメント1回戦で優勝候補のスペインを撃破する。準々決勝は延長・PK戦の末に敗れたとはいえ、2014年のワールドカップを制した世界王者のドイツを最後まで苦しめた。

 最終結果は頂点に程遠いベスト8敗退だったが、その戦いぶりはイタリア国内でも賞賛された。勝利至上の国の人々でさえ、讃えたくなったのだろう。

 鉄壁を誇っていたのがディフェンスだ。統制が取れており、個々のポジショニングと味方同士の距離感は絶妙だった。それだけではない。敵の組み立てや崩しの局面では対応するMFやFWが目を疑うほどよく走り、ペナルティエリアにクロスが入ってくればGKや3CBを中心として勇敢に身体を張り続ける。

 ワールドカップを過去に4度制しているサッカー大国が恥も外聞もなく必死に寄せ、伸ばした最後の一歩がぎりぎりのところでシュートを防ぎもした。言うなれば「死力を尽くした守り」であり、ひとりひとりのハードワークを支えていたのがおそらく「生命の原動力や気力」、すなわち「魂」だった。

 限られた攻撃の機会を決定機まで持ち込めたのも、よく走っていたからだ。優勝を狙える国は、コンディションのピークを大会の終盤に合わせると言われる。ユーロ2016のイタリアに、そんな計算があっただろうか。おそらく、なかったのではないかと思う。目の前のボールに、一心不乱に食らいつく。ただ、その積み重ねで、前評判を覆したようにも見えたのだ。

なでしこジャパンが掴み取ったW杯優勝。

 もう一例、模範にできるのは同じ日本代表。ワールドカップ決勝のなでしこジャパンだ。

 2011年大会の決勝は、二度リードを許す苦しい展開となる。対戦相手は、それまで24戦して3分21敗、つまり一度も勝利できずにいたアメリカだった。

 なでしこジャパンが見せたのは、不屈の戦いだ。まずは終盤の81分に同点として延長戦に持ち込むと、104分に突き放されながら、終了間際にもう一度追いついた。最後まで諦めない気持ちの強さを象徴していたのが、コーナーキックから澤穂希がヒールキックで突き刺した117分のゴールだろう。

 PK戦の末、ワールドカップを制した日本代表が、東日本大震災から間もなかったこの国の人々をどれだけ励ましたか、言葉にするのは難しい。

【次ページ】 4年後の決勝でも見せた逞しさ。

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長友佑都
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