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ヤクルトの「新・勝利の方程式」。
石山、近藤、中尾が開花した瞬間。 

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浜本卓也(日刊スポーツ)

浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto

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posted2018/06/16 07:00

ヤクルトの「新・勝利の方程式」。石山、近藤、中尾が開花した瞬間。<Number Web> photograph by Kyodo News

「9回になれば石山がいる」という安心感が今のヤクルトを支えている。

どこに投げたか分からないほどの思い切り。

 そんな中、急成長を見せたのが2年目左腕の中尾輝だった。昨季は2試合に登板したのみ。経験は浅く、直球に力感はあるが制球に不安があった。だが、首脳陣は中尾のポテンシャルを信じ、中継ぎで起用を続けた。田畑、石井弘寿の両投手コーチは、展開的に気負わずにマウンドに上がれる場面から投げさせた。「思い切り腕を振ってこい」と長所を消さないように送り出し、場数を踏ませた。

 進化の兆しを見せたのが、5月1日の中日戦だった。3番手で登板した中尾は、アルモンテに右翼右への二塁打を浴びた。無失点に抑えてベンチに戻ると、田畑投手コーチに「外甘(外角の甘いコース)だった?」と声を掛けられた。中尾は困ったような顔をして、こう答えたという。

「思い切り腕を振ることしか考えてなかったので、外甘かどうか……。すみません」

 どこに投げたか分からなかったという言葉に、田畑コーチは「恐れずに思い切って投げられるようになっている」と成長を感じ取った。

 かつて左のセットアッパーとして活躍し、五十嵐亮太(現ソフトバンク)とともに「ロケットボーイズ」と言われた石井弘投手コーチも「思い切り投げ込めるようになったということだと思います」とうなずいた。ヤクルトのブルペン陣にいなかった「左のパワー投手」として、勝利の方程式で先陣を担うピースにはまった。

プロ17年目の男が野球に取り組む姿勢。

 厳しい状況を任されるセットアッパーには、経験豊富な鉄腕の近藤が名を連ねる。プロ17年目、昨季54試合に登板の実績もさることながら、特筆すべきは、野球に向き合う「姿勢」だ。

 試合前の練習は、誰よりも早くグラウンドに姿を見せ、1人で入念に準備。試合ではリードしていようが点差が何点あろうが、常に同じテンションでマウンドに走って向かう。リリース後に右足が跳ね上がるほど勢いよく、140km台の直球とスライダー、フォークをガンガン突っ込む。田畑コーチは「そういう姿勢をみんな見ている」とマウンド外での貢献度も高い。

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